皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 それでもミレーヌは隊長室の扉の前で立ち止まったのは、両手がその書き損じの紙で塞がれてしまっているからだ。

「あまり、無理するな」と苦笑しながら、エドガーが扉を開けてあげる。

「ありがとうございます」
 ミレーヌは頭を下げて、廊下をかろうじて走ってはいないような速度で去った。

 エドガーは、気になる女性が気になる行動をとっていたためか、気になって気になって仕方がなかった。自席に戻り、再び腰を落ち着け、事務仕事の続きをやろうとしても、やはり気になって仕方がない。
 どちらにしろ、事務仕事にも飽きたし、気分転換のために外の空気を吸いに行くのも悪くはないだろう、と思うことにした。
 手にしたペンをまた置くと、机の上に両手をついて立ち上がった。そして隊長室を後にし、その建物の外へと向かった。
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