クールで無口(大嘘)な白井くんは愛が重い



とにかく行っておいでよ、と面白そうに言った香織に送り出されて、何食わぬ顔で廊下に向かう。



わたしはただ、廊下にあるロッカーに向かっているだけ。だけ。それだけ。それで話しかけられたらまあ考えるけど、わたしから話しかけたりとかはしない、話しかけられ待ちしたりもしない、うん、だからわたしはロッカーに



「宮坂さん」



まだ教室内なんですけど……。



扉の外に出るまで、あと10歩ほど。



「なんですか」

「昨日はごめんなさい。突然、あんなふうに」

「んえ、あ、や、全然べつにとても全然……」



まさかこんなふうに謝られるなんて思っていなくて、何を言ってるのかまったくもってわからない。脊髄反射で話してる気がする。



「まずは僕のことをよく知ってもらうところからでしたよね」



…………まちがってはない、の、か……?



何を教えてくれるんだろう。たしかにパンドラの箱すぎる無口ぐあいだったし、知らないよりは知っていたほうがいいかもしれないけど。


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