悪役令嬢は騎士の腕の中で啼く――婚約破棄したら、爵位目当ての騎士様に求婚されました――
突然呻き始めたシルヴァのことが心配になって、彼の顔を覗き込む。
すると――。
「俺の意思に反して、身体が勝手に……!」
(身体が勝手に……?)
そんなことがあるのだろうか――?
「は、はあ……」
「俺は、妹のように思っているリモーネに、決してやましい感情など抱いては……」
また彼が何やら言い訳めいたことを呟き始めた。
(最近のシルヴァお兄ちゃんはやっぱり変だわ……)
残った使用人たちの噂では、不愛想で冷静沈着な、出世街道まっしぐらの青年騎士としてシルヴァは世間では噂されているらしい。
(全然噂とは違うわね……)
彼を見て、くすりと笑った。
その時、ふと先日の彼の言葉を思い出す。
『リモーネ本人を見れば、どんな人間かは分かるというのに』
頭の中で反芻する。
本当にその通りだなと思った。
(いつか私の悪評も嘘だって、皆は分かってくれるのかしら……?)
シルヴァといると、自分の気持ちがどんどん上向いてくる。
彼に抱く、時々ドキドキして、時々温かくなるような、今まで感じたことのない感情。
なんだか胸の奥で独り占めしたいような、彼に伝えてしまいたいような、そんな気がしてくる。
「そうだリモーネ……朝になったら、小さい頃から子どもたちの遊び相手になっていた孤児院にいかないか――?」
「孤児院――?」
「そうだ、子どもの頃はよく、一緒に世話に行っただろう? お前は今も手伝いに行ってるんじゃないか?」
彼の言葉にこくこくと頷いた。
「あの子たちなら、噂なんて関係なくお前のことを見てくれるだろう。俺と一緒に行こう――そして、帰りにお前に伝えたいことがあるんだ」
(確かに子どもたちにしばらく会ってない……それに、お兄ちゃんが私に伝えたいことって……?)
せっかくなので、シルヴァの提案を私は了承することにした。
「――よし、それじゃあ、お兄ちゃん、お休みなさ――」
「リモーネ」
再び眠りにつこうとした私を、シルヴァが呼び止める。
真摯な瞳で私を覗きながら、彼は告げた。
「今度はキスの練習だけで留まるから……やり直させてくれ」
彼の申し出に――。
「……はい……」
すると、彼はまた私に口づけてきた。
「あ……ん……」
彼に唇を塞がれた時に気づいたことがある。
(私は……偽の夫婦と言う言葉を言い訳にして、お兄ちゃんのキスを待ってる……)
それに、気になって仕方がないことがある。
(――明日、孤児院の帰りに、私に話したいことって、一体なに?)
「ん……はふ……あ……」
「リモーネ……」
何度繰り返したか分からないが、彼から何度も口づけられている間に、私はいつの間にか眠りについてしまっていた。
その日はなんだか、久しぶりにとても幸せな夜を過ごせたのだった――。
すると――。
「俺の意思に反して、身体が勝手に……!」
(身体が勝手に……?)
そんなことがあるのだろうか――?
「は、はあ……」
「俺は、妹のように思っているリモーネに、決してやましい感情など抱いては……」
また彼が何やら言い訳めいたことを呟き始めた。
(最近のシルヴァお兄ちゃんはやっぱり変だわ……)
残った使用人たちの噂では、不愛想で冷静沈着な、出世街道まっしぐらの青年騎士としてシルヴァは世間では噂されているらしい。
(全然噂とは違うわね……)
彼を見て、くすりと笑った。
その時、ふと先日の彼の言葉を思い出す。
『リモーネ本人を見れば、どんな人間かは分かるというのに』
頭の中で反芻する。
本当にその通りだなと思った。
(いつか私の悪評も嘘だって、皆は分かってくれるのかしら……?)
シルヴァといると、自分の気持ちがどんどん上向いてくる。
彼に抱く、時々ドキドキして、時々温かくなるような、今まで感じたことのない感情。
なんだか胸の奥で独り占めしたいような、彼に伝えてしまいたいような、そんな気がしてくる。
「そうだリモーネ……朝になったら、小さい頃から子どもたちの遊び相手になっていた孤児院にいかないか――?」
「孤児院――?」
「そうだ、子どもの頃はよく、一緒に世話に行っただろう? お前は今も手伝いに行ってるんじゃないか?」
彼の言葉にこくこくと頷いた。
「あの子たちなら、噂なんて関係なくお前のことを見てくれるだろう。俺と一緒に行こう――そして、帰りにお前に伝えたいことがあるんだ」
(確かに子どもたちにしばらく会ってない……それに、お兄ちゃんが私に伝えたいことって……?)
せっかくなので、シルヴァの提案を私は了承することにした。
「――よし、それじゃあ、お兄ちゃん、お休みなさ――」
「リモーネ」
再び眠りにつこうとした私を、シルヴァが呼び止める。
真摯な瞳で私を覗きながら、彼は告げた。
「今度はキスの練習だけで留まるから……やり直させてくれ」
彼の申し出に――。
「……はい……」
すると、彼はまた私に口づけてきた。
「あ……ん……」
彼に唇を塞がれた時に気づいたことがある。
(私は……偽の夫婦と言う言葉を言い訳にして、お兄ちゃんのキスを待ってる……)
それに、気になって仕方がないことがある。
(――明日、孤児院の帰りに、私に話したいことって、一体なに?)
「ん……はふ……あ……」
「リモーネ……」
何度繰り返したか分からないが、彼から何度も口づけられている間に、私はいつの間にか眠りについてしまっていた。
その日はなんだか、久しぶりにとても幸せな夜を過ごせたのだった――。