悪役令嬢は騎士の腕の中で啼く――婚約破棄したら、爵位目当ての騎士様に求婚されました――

第7話 お兄ちゃんは、何を隠しているんです?



 翌朝、シルヴァと私は二人で孤児院に向かうことになった。

 小さい頃から、院の子どもたちと遊ぶのが常だったのだ。
 だが、クラーケとセピア公爵令嬢の一件で、私に悪評が立ってしまった。そのため、孤児院に迷惑をかけてはいけないと思い、子どもたちに会いに行くのをしばらく控えていたのだ。

「大丈夫だ――あの子らは、お前の味方をしてくれる」

 シルヴァに言われると、本当にそのような気がしてくる。
 不安でしょうがなかったが、人に会う勇気がもらえたようで、なんだかぽかぽか胸が温かくなる。

 そんなことを考えていると、ふと、彼の唇が目に入った。

(私ったら……何を見て……)

 途端に恥ずかしくなって、視線をそらす。

 そんな私に気づいたのか、シルヴァがこちらを向いた。

 そうして彼が、私の顎に手を添える。


「リモーネ……」

 名前を呼んだ後、彼がそっと口づけてきた。

 一瞬触れるだけの軽いキス。

 だけど、私の頬はきっと林檎のように赤く染まっているに違いない。
 火が着いたように、身体中が火照ってくる。

「さあ、行こうか」

 そう言って、大きくなった彼の手に引かれて歩き始めた。

 胸がはち切れそうなほどにドキドキと高鳴る。

(私たち、なんだか――)

 本当の夫婦になったんじゃないかと錯覚してしまいそうだった。


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