悪役令嬢は騎士の腕の中で啼く――婚約破棄したら、爵位目当ての騎士様に求婚されました――
「お前が、そこまでダメだっていうなら、ここで辞めにしよう」
こんな場所でダメだと自分から言ったくせに、少しだけ寂しい思いをしてしまう。
「あ……お兄ちゃん、私――」
説得力がないぐらいに、ショーツがぐちゃぐちゃに濡れてしまっていた。
羞恥で頬が赤らんでいく。
「あ、あの――」
真っすぐに、夫であるシルヴァの顔を見ることは出来なかった。
なんだかあまりにも恥ずかしくなって、涙が少しだけ滲む。
そうしたら、彼が私の頬に口づけてきた。
「ああ、俺の可愛いリモーネ、俺が意地悪を言い過ぎたようだ」
そうして彼は、私の口唇の周囲を、場所を変えて何度も口づけてくる。
「俺は続けても良いか――?」
低い声音でそう問われ、もう濡れ切ってしまっていた私は、こんな神聖な場所ではしたないとはわかっていたけれど――。
「シルヴァお兄ちゃん……お願い……します」
――彼のことをねだってしまったのだった。