悪役令嬢は騎士の腕の中で啼く――婚約破棄したら、爵位目当ての騎士様に求婚されました――
おまけ
※完全におまけですので、割愛していただいても問題ありません。
――結婚して約20年後のこと。
最近、私の夫であるシルヴァ・エスト(一応、将軍職)には心配事がある。
銀色の髪に碧色の瞳をした精悍な青年から、今は少し渋めの壮年の男性になった。
元々騎士であり、身体を鍛えているからか、同年代の人たちよりも一回り位は若く見える。三十代後半だと言われても信じる人たちも多いだろう。
そんなシルヴァだが、今は城の柱の陰に隠れて、廊下の向こうを密かにのぞき見していた。
(正直怪しい……)
道行く騎士達が、上司の奇行を冷ややかな目で見ている。
だが、当の本人が気づいていない。
シルヴァがうめき声をあげた。
「ランスロット……」
そう、夫の気になりごとと言うのは――。
「ランスロット様……!」
「会いたかったよ、オルテンシア!」
――我々の長男ランスロット・エストと、その婚約者のオルテンシア・オーヴェスト公爵令嬢のことだった。
私たち夫婦が結婚してすぐに出来た、我が子ランスロットは、シルヴァ譲りの白銀の髪に、私譲りの紫水晶のような瞳を持った男の子だ。もうとっくに成人していたし、我が息子ながら女性に人気だったのに、なかなか女性関係の話が出ないのが気がかりだった。けれども、そのおかげで敵対していた西側陣営との政略結婚がうまくいったのだし、シルヴァも最初はにこにこしていたのだけど――。
「年を考えるんだ、ランスロット……ダメだ、そんないやらしい手つきで、オルテンシア嬢を抱き寄せたら……! くっ、頬をすり寄せたりして、見ていられない……!」
抱きかかえたオルテンシアちゃんの頬に、自身の頬を寄せる我が子を見ながら実況中継していたシルヴァが悲痛な声を上げる。
(年を考える……)
そう、問題は長男ランスロットはとっくに成人済みの青年だが、婚約者のオルテンシア公爵令嬢はまだ十歳前後ということだった。
淡いローズピンクの長い髪を揺らしながら、少女はランスロットの首に抱き着いた。
「さあ、オルテンシア、今日は何をして遊ぼうか?」
「ええっと……ランスロット様……いつものあれをしてください……」
幼いオルテンシアは頬を赤らめながら、一回りほど年上の婚約者に微笑んでいた。
「分かった――オルテンシア、今日は日の曜日だ――今夜は離さない」
「まあ……! まだ昼間ですよ、ランスロット様」
ひどく幸せそうな微笑みを浮かべながら、婚約者を抱きかかえた我が子は、自身の部屋へと消えていった。
「ランスロット……! いつものあれとはなんだ、あれとは……! よそ様の娘さんにおかしなことをしているんじゃないだろうな……!」
私の夫シルヴァはぎりぎりと歯噛みしている。
「シルヴァ……もう好きにさせたらどう? それに、昔の私に対する貴方の対応も似たようなもので――」
「――ランスロットのあれと、俺のお前への対応を一緒にしないでもらおうか――!?」
私が声をかけると、ものすごい勢いで彼が振り返ってきた。
(そう言えば、この人、寡黙で有名じゃなかったかな……)
ふと、結婚するよりももっと前、私の父であるシトロニエ伯爵が生きていた頃に、彼が使用人として仕えていた頃のことを思い出す。
シルヴァが、今のランスロットぐらいの年の頃じゃないだろうか――。
※※※
「リモーネ、ほら、こっちにおいで」
「シルヴァお兄ちゃん……!」
幼い頃の私は、銀色の髪をした綺麗な顔立ちの幼馴染であるシルヴァに抱き着いた。
彼は私を抱き上げると、頬に頬をすり寄せてくる。
「リモーネは、大人になったら、シルヴァお兄ちゃんと結婚したい」
私がそう言うと、彼は至極嬉しそうに微笑んだ。
「ああ、リモーネ……お前に、そう言ってもらえるなんて、お兄ちゃんはすごく幸せだ」
そうして、シルヴァが私の小さな体を、ひどく大事そうに抱きしめてきたのだった。
※※※
回想を終了させたが――。
(シルヴァもランスロットもさして変わらないような……)
――似たもの親子だ。
そんなことを思った。
部屋に消えた息子に対して、まだ文句を言っているシルヴァの方へと、私はちらりと視線を向ける。
「ランスロット、お前というやつは……! どうして、父さんのように、彼女が大人になるのを待てないんだ……! くそっ……お前は簡単に婚約出来たかもしれないが、俺はリモーネと結婚するために、どれだけ裏で手を回したと思って……俺だって、幼い頃のリモーネと婚約できたなら――」
背筋がぶるりと震えた。
(これ以上聞いたら、いけない気がする……)
単純に長男の境遇を羨ましがって、嫉妬しているだけではないのか――?
ちょっと怖くなってきたので、そっと夫のそばから離れようとしたところ――。
「待ってくれ、リモーネ」
「きゃっ……!」
突然、腕を引き寄せられた――かと思うと、軽々と彼に横抱きにされてしまった。
「シルヴァ、ちょっと、何して……」
「俺たちもランスロットに負けてはいられない」
「はい……?」
そのまま彼は寝室に直行する。
「え? え? ちょっと……」
事態が飲み込めないままでいると、昼間だというのにベッドに連れて行かれていた。
「何人子どもを産んでも、お前は愛らしいままだ、リモーネ」
気づけば、横たわる私の身体の上に、シルヴァが跨ってきている。
「え、あ、あの……」
「今日は休日だ――俺もお前を朝まで離さない」
シルヴァは息子と張り合っているようだった。
(朝まで?)
どういう原理だか分からないが、シルヴァの見た目は三十代の頃とさして変わらない。
そして――。
(シルヴァの体力は――)
「リモーネ……」
油断していたら、いつの間にかドレスを脱がされそうになっていた。
(若い頃のまま……!)
「リモーネ、愛してる……」
「え……シルヴァ……んんっ……!」
くちゅくちゅ厭らしい水音が立ち込める。
彼の大きな手が、柔肉に伸びて形を変形させはじめた。
「あっ、んんっ、あっ……!」
――夫に唇を塞がれた私は、そのまま朝まで彼に啼かされ続けたのでした。
(おしまい)
ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございました。
いつもムーンライト様で、異世界恋愛をメインに書いているのですが、2022年は現実恋愛でも頑張っていこうと思っています♪
これからも応援していただけましたら幸いです♪
――結婚して約20年後のこと。
最近、私の夫であるシルヴァ・エスト(一応、将軍職)には心配事がある。
銀色の髪に碧色の瞳をした精悍な青年から、今は少し渋めの壮年の男性になった。
元々騎士であり、身体を鍛えているからか、同年代の人たちよりも一回り位は若く見える。三十代後半だと言われても信じる人たちも多いだろう。
そんなシルヴァだが、今は城の柱の陰に隠れて、廊下の向こうを密かにのぞき見していた。
(正直怪しい……)
道行く騎士達が、上司の奇行を冷ややかな目で見ている。
だが、当の本人が気づいていない。
シルヴァがうめき声をあげた。
「ランスロット……」
そう、夫の気になりごとと言うのは――。
「ランスロット様……!」
「会いたかったよ、オルテンシア!」
――我々の長男ランスロット・エストと、その婚約者のオルテンシア・オーヴェスト公爵令嬢のことだった。
私たち夫婦が結婚してすぐに出来た、我が子ランスロットは、シルヴァ譲りの白銀の髪に、私譲りの紫水晶のような瞳を持った男の子だ。もうとっくに成人していたし、我が息子ながら女性に人気だったのに、なかなか女性関係の話が出ないのが気がかりだった。けれども、そのおかげで敵対していた西側陣営との政略結婚がうまくいったのだし、シルヴァも最初はにこにこしていたのだけど――。
「年を考えるんだ、ランスロット……ダメだ、そんないやらしい手つきで、オルテンシア嬢を抱き寄せたら……! くっ、頬をすり寄せたりして、見ていられない……!」
抱きかかえたオルテンシアちゃんの頬に、自身の頬を寄せる我が子を見ながら実況中継していたシルヴァが悲痛な声を上げる。
(年を考える……)
そう、問題は長男ランスロットはとっくに成人済みの青年だが、婚約者のオルテンシア公爵令嬢はまだ十歳前後ということだった。
淡いローズピンクの長い髪を揺らしながら、少女はランスロットの首に抱き着いた。
「さあ、オルテンシア、今日は何をして遊ぼうか?」
「ええっと……ランスロット様……いつものあれをしてください……」
幼いオルテンシアは頬を赤らめながら、一回りほど年上の婚約者に微笑んでいた。
「分かった――オルテンシア、今日は日の曜日だ――今夜は離さない」
「まあ……! まだ昼間ですよ、ランスロット様」
ひどく幸せそうな微笑みを浮かべながら、婚約者を抱きかかえた我が子は、自身の部屋へと消えていった。
「ランスロット……! いつものあれとはなんだ、あれとは……! よそ様の娘さんにおかしなことをしているんじゃないだろうな……!」
私の夫シルヴァはぎりぎりと歯噛みしている。
「シルヴァ……もう好きにさせたらどう? それに、昔の私に対する貴方の対応も似たようなもので――」
「――ランスロットのあれと、俺のお前への対応を一緒にしないでもらおうか――!?」
私が声をかけると、ものすごい勢いで彼が振り返ってきた。
(そう言えば、この人、寡黙で有名じゃなかったかな……)
ふと、結婚するよりももっと前、私の父であるシトロニエ伯爵が生きていた頃に、彼が使用人として仕えていた頃のことを思い出す。
シルヴァが、今のランスロットぐらいの年の頃じゃないだろうか――。
※※※
「リモーネ、ほら、こっちにおいで」
「シルヴァお兄ちゃん……!」
幼い頃の私は、銀色の髪をした綺麗な顔立ちの幼馴染であるシルヴァに抱き着いた。
彼は私を抱き上げると、頬に頬をすり寄せてくる。
「リモーネは、大人になったら、シルヴァお兄ちゃんと結婚したい」
私がそう言うと、彼は至極嬉しそうに微笑んだ。
「ああ、リモーネ……お前に、そう言ってもらえるなんて、お兄ちゃんはすごく幸せだ」
そうして、シルヴァが私の小さな体を、ひどく大事そうに抱きしめてきたのだった。
※※※
回想を終了させたが――。
(シルヴァもランスロットもさして変わらないような……)
――似たもの親子だ。
そんなことを思った。
部屋に消えた息子に対して、まだ文句を言っているシルヴァの方へと、私はちらりと視線を向ける。
「ランスロット、お前というやつは……! どうして、父さんのように、彼女が大人になるのを待てないんだ……! くそっ……お前は簡単に婚約出来たかもしれないが、俺はリモーネと結婚するために、どれだけ裏で手を回したと思って……俺だって、幼い頃のリモーネと婚約できたなら――」
背筋がぶるりと震えた。
(これ以上聞いたら、いけない気がする……)
単純に長男の境遇を羨ましがって、嫉妬しているだけではないのか――?
ちょっと怖くなってきたので、そっと夫のそばから離れようとしたところ――。
「待ってくれ、リモーネ」
「きゃっ……!」
突然、腕を引き寄せられた――かと思うと、軽々と彼に横抱きにされてしまった。
「シルヴァ、ちょっと、何して……」
「俺たちもランスロットに負けてはいられない」
「はい……?」
そのまま彼は寝室に直行する。
「え? え? ちょっと……」
事態が飲み込めないままでいると、昼間だというのにベッドに連れて行かれていた。
「何人子どもを産んでも、お前は愛らしいままだ、リモーネ」
気づけば、横たわる私の身体の上に、シルヴァが跨ってきている。
「え、あ、あの……」
「今日は休日だ――俺もお前を朝まで離さない」
シルヴァは息子と張り合っているようだった。
(朝まで?)
どういう原理だか分からないが、シルヴァの見た目は三十代の頃とさして変わらない。
そして――。
(シルヴァの体力は――)
「リモーネ……」
油断していたら、いつの間にかドレスを脱がされそうになっていた。
(若い頃のまま……!)
「リモーネ、愛してる……」
「え……シルヴァ……んんっ……!」
くちゅくちゅ厭らしい水音が立ち込める。
彼の大きな手が、柔肉に伸びて形を変形させはじめた。
「あっ、んんっ、あっ……!」
――夫に唇を塞がれた私は、そのまま朝まで彼に啼かされ続けたのでした。
(おしまい)
ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございました。
いつもムーンライト様で、異世界恋愛をメインに書いているのですが、2022年は現実恋愛でも頑張っていこうと思っています♪
これからも応援していただけましたら幸いです♪