君との恋の物語-Blue Ribbon-
愛
オーディションの結果発表の後は、2人でご飯に行くことになっていたんだけど、発表の時近くにいた藤原先輩や打楽器の先輩達も一緒に行くことになり、12月のAブラスの本番に向けての決起会みたいになった。
聞いたところによると、今回の合格者の中で一年生は私と恒星君だけだったみたいで、先輩達からたくさん褒められた。
本当、頑張ってよかったなぁ。
私自身が褒められることはもちろん、恒星君が褒められていることもすごく嬉しかった。
そして、食事どころか飲み会みたいな雰囲気になり、他の先輩達も合流し始めたところで藤原先輩が気をまわして私達を帰してくれた。
帰り際、先輩は私を捕まえて耳打ちした。
『明日、頑張ってね!』
/////
改めて言われると、急に恥ずかしくなった。
藤原先輩には明日のことも全部話してある。だからこそ私達を早く帰してくれたんだろう。
恒星君と2人でお店を出て駅まで歩く。
いつも一緒に帰ってたのに、なんか今日は新鮮。
改札の前まできて、一度歩くのをやめて向き合った。
「合格できてよかった。恒星君、ありがとうね。それと、改めておめでとう」
『どういたしまして。それからこちらこそありがとう。おめでとう。』
私の心はとても穏やかだった。
こうして2人とも合格して、向き合えてる。
幸せだわ。
「明日も早いし、今日は帰りましょ!」
『そうだな。楽しみにしてる!』
私もよ。
電車に乗って、並んで座って、2人してまたちょっとうとうとして…あっという間に小山駅。
「またね!気をつけて!」
『うん、結さんも気をつけて!』
お互いに手を振って別々の方向に歩き出した。
今日ほど足取りが軽い帰り道はないわ。
本当は、これからもっともっと頑張らなきゃなんだけど、いいの!今日と明日だけは。
夏休みを返上して頑張った自分へのご褒美よ。
次の日の朝、待ち合わせより少し早く着くと、やっぱり恒星君も早くきてた笑
助手席の窓をコンコンと軽く叩く。
「おはよ!」
『おはよう。早いね。』
お互い様でしょ?っていうか、なんだろ、この間とはまた違った意味で緊張してる??
いや、緊張するのは私も一緒なんだけど笑
なんか、ドキドキする…。
これから告白しようと思ってる相手が隣にいて、車の中で2人きりなんて…////
『…さん?』
え?
「え!?あ、ごめん、なぁに?」
『なんか、緊張してる?』
バレた。笑
「え?そんなことないけど、恒星君こそ緊張してない?」
『え?いや、まぁ、運転があるからね。多少は』
苦しい言い訳っぽい…笑
いいや、話変えちゃお
「あのさ、今日は、どこから回る?」
『あぁ、大洗水族館はどうだろう?結構面白いらしいんだ!』
乗ってきてくれた。
一度話し始めてしまえば、お互い緊張することもなく、気軽に話すことができた。
大洗水族館は想像以上に大きかった。
しかも、サメが沢山(°_°)
聞けば日本で1番サメが多い水族館なんだとか。
でも
「サメって全部が怖い顔してるわけじゃないのね。ほら、ジンベエザメとか、結構かわいいかも!」
『確かに。いやかわいいけど、やっぱり俺は苦手だ…デカすぎる』
へぇ、意外。
「恒星君にも、怖いものがあるのね。」
思わずクスクスと笑ってしまった。
『そりゃそうだよ。今日初めて自覚したけど』
そう言って笑い合った。
すごーくゆっくり回って遅めのお昼を食べて、海岸を散歩した。
話なんて全然尽きなくて、いつまでだってこうしていたいなって思った。
でも、できるなら手を繋ぎたい。
恒星君に触れたいって思った。
そうやって歩いていたら、いつの間にか、恒星君がリボンをくれた広場の方まできてた。
え?もしかして、最初からここにくるつもりだったの?
『結さん、話があるんだ。』
え?
『俺、元カノと別れてから、まだ間もないけど…』
気付いたら、恒星君の唇に人差し指を立てていた。
恒星君がなにを言おうとしてるかはわからないけど、もし、もしも私と同じことを言おうとしてるなら…
この告白だけは、絶対譲らないわよ。
「ごめん、先に私の話を聞いてほしいの。お願い。ずっと、言いたかったことだから。」
恒星君の目を真剣に見つめた。
『わかった。聞くよ。』
恒星君は、いつものように静かに微笑んだ。
「恒星君、私、あなたのことが好き。大好き。恒星君を初めて見た時から気になってて、でもあなたには彼女がいて、最初は別にそれでもよかった。いつか、恒星君が私を見てくれたらって思ってたから。」
一旦切る。
恒星君は、真剣な表情で私を見てる。
ありがと。見ててね。ずっと。
「でも、元カノさんの話聞いて、ちょっとあまりにも酷いなって思ったわ。あの時私は思ったの。私なら、恒星君を支えてあげられるのにって。」
『うん。』
「恒星君、あなたはこれからもずっと、ずっとずっと頑張って、トップに居続けられる人。それだけの力もあるし、努力もできる、素敵な人よ。私は、そんなあなたの支えになりたい。一緒に努力して、一緒にトップに居続けるの。学校内のことだけじゃなくて、2人それぞれ頑張って、どんどん結果を残していきたい。ずっと、恒星君の隣で、同じ景色を見ていたいの。これから恒星君が落ち込んだり傷付いたりしたら、また進めるようになるまで支える。いつでも一緒にいて、あなたの力になりたい。」
重いかなって思った。でも、本音だから。
こんなところで小手先の言葉なんていらない。
もう一度言うわ。
「大好きです。私と付き合ってください。」
あぁ、やっと言えた。
なんだろ…悲しくなんてないのに、涙が出る…
魂が、震えてるみたい…
え?
恒星君が、私の涙を拭ってくれた。
『ありがとう結さん。そんなに想ってくれてたんだ。』
そうよ!出会った時からずっと好きだったのよ!
「恒星君が、元カノさんと別れた時には、少しホッとしたわ。それに、その時思ったの。きっと、オーディション受けるだろうなって。だから、オーディションが終わったら告白しようって決めて、それまでは私もオーディションに集中することにしたの。恒星君と一緒だったから、辛くなんてなかった。」
『ありがとう。俺も、結さんがいてくれたから、頑張れた。そして、合格できた。結さん。』
恒星君が、改めて私の目を見つめた。
『いつも、一緒に努力してくれてありがとう。いつも、支えてくれてありがとう。助けてくれてありがとう。これからも、ずっと一緒にいて、良いことも悪いことも一緒に経験したい。』
今度は恒星君が言葉を切った。
『大好きです。俺と、付き合ってください。』
視界がぼやけてなにも見えなくなった。
あぁ、よかった。
頑張ってよかった。
いつの間にか、恒星君を抱きしめていた。
「ありがとう。よろしくお願いします。」
『こちらこそ、よろしくお願いします。』
「愛してるわ」
自然と口から出てしまった。
恥ずかしいけど、いい。本当のことだから。
『うん。愛してるよ。』
嬉しい。
少しだけ身体離して顔を合わせた。
どちらともなく近づいていく。
唇と唇が重なる確かな感触。
背中に回された腕。
恒星君の匂い。波の音。
その全てが、心地よかった。
私も腕に力を入れる。
そのまま、いつまでも抱き合って、何度もキスをして、お互いの気持ちを確かめ合った。
『すっかり遅くなってしまったな。』
今は、夜7時くらい。
「そうね。夕飯食べていく?」
『時間、大丈夫なのか?』
まぁ、大丈夫よ。友達と出かけるとは言ったけど、男の子とは言ってないし笑
「連絡しておけば大丈夫。恒星は?」
呼び捨てにしてみた。
『う、うん、結が大丈夫なら、大丈夫。』
あ、嬉しい。
「よかった。呼び捨てしてくれた。」
『彼氏、だからな。』
「うん、そうね!」
嬉しいな。
照れ笑いする恒星を愛おしく感じた。
帰り際に見つけたチェーン店で夕飯を食べた。
もう、楽しくて楽しくて!
2人ともオーディションで溜まってたストレスも全部おしゃべりで解消してる感じだった。
お店を出る頃には9時を過ぎてしまった(°_°)
さすがにやばいかなと思ったんだけど、私はこの時にはもう覚悟を決めていた。
親には、友達と泊まって行くって連絡した。
私、今夜…。
「ねぇ、恒星?」
『ん?』
「今夜、泊まっていかない?」
『え?』
いつもみたいに目がまんまる笑
「都合、悪い?」
『いや、全くそんなことはないけど…いいの?』
何度も言わせないでよ。笑
さすがに恥ずかしいわ/////
「うん、いいよ。」
『わ、わかった、えっと、とりあえず、親に連絡しなきゃ、だろ?』
「うん、私はもうしたから大丈夫!」
また目をまんまるにして驚いてる。笑
かわいいな。
『え?そ、そうか、わかった。ちょっと、待ってて。』
そう言うと、一旦車から出ていった。
言っちゃった。
大丈夫かな?私。
私は、実は男性経験がない。
恋愛経験じゃなくて、男性経験ね。
詩乃とは、半年くらい付き合ってたし、そう言う雰囲気になりかけたりもしたけど、身体に触れられそうになると、ちょっと怖かったから、ずっと断ってた。
なのに、私は今、恒星に触れたいと思っている。
人によってはまだ早いとか言うと思うけど、私は、そうじゃない。
お互い年頃だもん。
付き合うってことは、そう言う覚悟だって必要でしょ?
【初めてをあげる】覚悟なんて、とっくにできてる。
何故って?恒星が誠実な人だと思うからよ。
きっと、私の初めてを、大事にしてくれると思うから。
『ごめん、お待たせ。えっと、どこに、泊まろうか?』
もぅ、私はちゃんと覚悟してるんだからねっ!
「海沿いに行きましょ?」
『え?あぁ、うん。』
ちゃんと通じたみたい。
よかった。
派手なネオンの建物に車を入れて、受付に進んだ。
私は受付の仕方もお金の払い方もわからないので、手続きは恒星にお願いして黙っていた。
受付って言っても、部屋の写真が貼られたパネルのボタンを押すだけみたい。
そのまま鍵も受け取らずにエレベーターに進んだ。
「なんか、緊張するね。」
エレベーターの中でだんまりなのも気まずいので話しかけた。
『そうだな。』
「それは、私と2人きりだから?それとも、こういうホテルだから?」
この言葉で、恒星の硬い表情がすこし和らいだ。
『両方だよ。こういうところは初めてだから。』
そっか、こういうところは、恒星も初めてなんだ。
部屋に入ると、まずその広さにびっくりした。
全体的に明るいし、特に変なところはない。
私達は、まずソファに座った。
「恒星、今日も運転してくれてありがとね。疲れたでしょ?」
『いや、大丈夫。むしろ丸一日付き合わせてしまった上にこんなことになってごめん。』
何言ってるのよ。
「いいの、誘ったのは私なんだから!」
『ん?まぁ、そうか。えっと、シャワー、先に行くかい?』
そうね、確かにちょっと浴びたいかも。けど、
「お風呂、溜めていい?私、できればお湯に使いたいから。」
『あぁ、もちろん。入れてくるよ。』
優しい。
「ありがとね。」
『タオルとローブも出しておいたから、どうぞごゆっくり。』
「ありがとう。じゃ、お言葉に甘えて。」
覗かないでよ?なんて軽口は叩けなかった。
緊張してきちゃった。。
服を脱いで、お風呂場に入ったら、もっと緊張してきた…
これから、全部見られるんだもん、綺麗にしなきゃ。
「おまたせ。」
ローブを着て出ると、恒星はソファでテレビを見ていた。
振り返った瞬間、表情が変わる。
固まってる。。?
「ちょっと、ジロジロみないでよ」
恥ずかしいじゃない。
『あぁ、ごめん、俺も、入ってくるよ。』
そう言って慌ただしくお風呂に向かっていった。
そっか、恒星も緊張してるんだ。
私は、恒星が戻ってくるのをベッドで待つことにした。
やばい、本当に緊張する。
大丈夫。相手は恒星なんだから。大丈夫よ、私。
『お待たせ』
そう言って出てきた恒星は、同じローブを着てる。
真っ直ぐに、私のいるベッドに向かってきた。
『付き合いたてなのに、こんなことになってしまってごめん。あの、まだ初日だし、今日は、手は出さないから。安心して。気になるようなら、ソファで寝るし。』
誠実な人。ありがとね。でも
「んん、いいの。初日だからって関係ないわ。私、覚悟はできてるから。」
『え?』
また目がまんまる
「いいよ。」
そう言ってベッドに横になった。
『本当に…?』
「うん、恒星が私を愛してくれてるの、ちゃんとわかってるから。ほら、ここにきて」
恒星が、私の上にきた。
ドキドキする。こうやって向かい合ったの、初めて。
『俺、結のこと、ずっと大事にするよ。愛してる。』
うん、ありがとう。
私は、恒星の顔に両手を添える。
いつかそうしたみたいに。でも、あの時とは全然違う。
「ありがとう、あのね、私…」
『ん?』
「初めてだから…優しくしてね。」
聞いたところによると、今回の合格者の中で一年生は私と恒星君だけだったみたいで、先輩達からたくさん褒められた。
本当、頑張ってよかったなぁ。
私自身が褒められることはもちろん、恒星君が褒められていることもすごく嬉しかった。
そして、食事どころか飲み会みたいな雰囲気になり、他の先輩達も合流し始めたところで藤原先輩が気をまわして私達を帰してくれた。
帰り際、先輩は私を捕まえて耳打ちした。
『明日、頑張ってね!』
/////
改めて言われると、急に恥ずかしくなった。
藤原先輩には明日のことも全部話してある。だからこそ私達を早く帰してくれたんだろう。
恒星君と2人でお店を出て駅まで歩く。
いつも一緒に帰ってたのに、なんか今日は新鮮。
改札の前まできて、一度歩くのをやめて向き合った。
「合格できてよかった。恒星君、ありがとうね。それと、改めておめでとう」
『どういたしまして。それからこちらこそありがとう。おめでとう。』
私の心はとても穏やかだった。
こうして2人とも合格して、向き合えてる。
幸せだわ。
「明日も早いし、今日は帰りましょ!」
『そうだな。楽しみにしてる!』
私もよ。
電車に乗って、並んで座って、2人してまたちょっとうとうとして…あっという間に小山駅。
「またね!気をつけて!」
『うん、結さんも気をつけて!』
お互いに手を振って別々の方向に歩き出した。
今日ほど足取りが軽い帰り道はないわ。
本当は、これからもっともっと頑張らなきゃなんだけど、いいの!今日と明日だけは。
夏休みを返上して頑張った自分へのご褒美よ。
次の日の朝、待ち合わせより少し早く着くと、やっぱり恒星君も早くきてた笑
助手席の窓をコンコンと軽く叩く。
「おはよ!」
『おはよう。早いね。』
お互い様でしょ?っていうか、なんだろ、この間とはまた違った意味で緊張してる??
いや、緊張するのは私も一緒なんだけど笑
なんか、ドキドキする…。
これから告白しようと思ってる相手が隣にいて、車の中で2人きりなんて…////
『…さん?』
え?
「え!?あ、ごめん、なぁに?」
『なんか、緊張してる?』
バレた。笑
「え?そんなことないけど、恒星君こそ緊張してない?」
『え?いや、まぁ、運転があるからね。多少は』
苦しい言い訳っぽい…笑
いいや、話変えちゃお
「あのさ、今日は、どこから回る?」
『あぁ、大洗水族館はどうだろう?結構面白いらしいんだ!』
乗ってきてくれた。
一度話し始めてしまえば、お互い緊張することもなく、気軽に話すことができた。
大洗水族館は想像以上に大きかった。
しかも、サメが沢山(°_°)
聞けば日本で1番サメが多い水族館なんだとか。
でも
「サメって全部が怖い顔してるわけじゃないのね。ほら、ジンベエザメとか、結構かわいいかも!」
『確かに。いやかわいいけど、やっぱり俺は苦手だ…デカすぎる』
へぇ、意外。
「恒星君にも、怖いものがあるのね。」
思わずクスクスと笑ってしまった。
『そりゃそうだよ。今日初めて自覚したけど』
そう言って笑い合った。
すごーくゆっくり回って遅めのお昼を食べて、海岸を散歩した。
話なんて全然尽きなくて、いつまでだってこうしていたいなって思った。
でも、できるなら手を繋ぎたい。
恒星君に触れたいって思った。
そうやって歩いていたら、いつの間にか、恒星君がリボンをくれた広場の方まできてた。
え?もしかして、最初からここにくるつもりだったの?
『結さん、話があるんだ。』
え?
『俺、元カノと別れてから、まだ間もないけど…』
気付いたら、恒星君の唇に人差し指を立てていた。
恒星君がなにを言おうとしてるかはわからないけど、もし、もしも私と同じことを言おうとしてるなら…
この告白だけは、絶対譲らないわよ。
「ごめん、先に私の話を聞いてほしいの。お願い。ずっと、言いたかったことだから。」
恒星君の目を真剣に見つめた。
『わかった。聞くよ。』
恒星君は、いつものように静かに微笑んだ。
「恒星君、私、あなたのことが好き。大好き。恒星君を初めて見た時から気になってて、でもあなたには彼女がいて、最初は別にそれでもよかった。いつか、恒星君が私を見てくれたらって思ってたから。」
一旦切る。
恒星君は、真剣な表情で私を見てる。
ありがと。見ててね。ずっと。
「でも、元カノさんの話聞いて、ちょっとあまりにも酷いなって思ったわ。あの時私は思ったの。私なら、恒星君を支えてあげられるのにって。」
『うん。』
「恒星君、あなたはこれからもずっと、ずっとずっと頑張って、トップに居続けられる人。それだけの力もあるし、努力もできる、素敵な人よ。私は、そんなあなたの支えになりたい。一緒に努力して、一緒にトップに居続けるの。学校内のことだけじゃなくて、2人それぞれ頑張って、どんどん結果を残していきたい。ずっと、恒星君の隣で、同じ景色を見ていたいの。これから恒星君が落ち込んだり傷付いたりしたら、また進めるようになるまで支える。いつでも一緒にいて、あなたの力になりたい。」
重いかなって思った。でも、本音だから。
こんなところで小手先の言葉なんていらない。
もう一度言うわ。
「大好きです。私と付き合ってください。」
あぁ、やっと言えた。
なんだろ…悲しくなんてないのに、涙が出る…
魂が、震えてるみたい…
え?
恒星君が、私の涙を拭ってくれた。
『ありがとう結さん。そんなに想ってくれてたんだ。』
そうよ!出会った時からずっと好きだったのよ!
「恒星君が、元カノさんと別れた時には、少しホッとしたわ。それに、その時思ったの。きっと、オーディション受けるだろうなって。だから、オーディションが終わったら告白しようって決めて、それまでは私もオーディションに集中することにしたの。恒星君と一緒だったから、辛くなんてなかった。」
『ありがとう。俺も、結さんがいてくれたから、頑張れた。そして、合格できた。結さん。』
恒星君が、改めて私の目を見つめた。
『いつも、一緒に努力してくれてありがとう。いつも、支えてくれてありがとう。助けてくれてありがとう。これからも、ずっと一緒にいて、良いことも悪いことも一緒に経験したい。』
今度は恒星君が言葉を切った。
『大好きです。俺と、付き合ってください。』
視界がぼやけてなにも見えなくなった。
あぁ、よかった。
頑張ってよかった。
いつの間にか、恒星君を抱きしめていた。
「ありがとう。よろしくお願いします。」
『こちらこそ、よろしくお願いします。』
「愛してるわ」
自然と口から出てしまった。
恥ずかしいけど、いい。本当のことだから。
『うん。愛してるよ。』
嬉しい。
少しだけ身体離して顔を合わせた。
どちらともなく近づいていく。
唇と唇が重なる確かな感触。
背中に回された腕。
恒星君の匂い。波の音。
その全てが、心地よかった。
私も腕に力を入れる。
そのまま、いつまでも抱き合って、何度もキスをして、お互いの気持ちを確かめ合った。
『すっかり遅くなってしまったな。』
今は、夜7時くらい。
「そうね。夕飯食べていく?」
『時間、大丈夫なのか?』
まぁ、大丈夫よ。友達と出かけるとは言ったけど、男の子とは言ってないし笑
「連絡しておけば大丈夫。恒星は?」
呼び捨てにしてみた。
『う、うん、結が大丈夫なら、大丈夫。』
あ、嬉しい。
「よかった。呼び捨てしてくれた。」
『彼氏、だからな。』
「うん、そうね!」
嬉しいな。
照れ笑いする恒星を愛おしく感じた。
帰り際に見つけたチェーン店で夕飯を食べた。
もう、楽しくて楽しくて!
2人ともオーディションで溜まってたストレスも全部おしゃべりで解消してる感じだった。
お店を出る頃には9時を過ぎてしまった(°_°)
さすがにやばいかなと思ったんだけど、私はこの時にはもう覚悟を決めていた。
親には、友達と泊まって行くって連絡した。
私、今夜…。
「ねぇ、恒星?」
『ん?』
「今夜、泊まっていかない?」
『え?』
いつもみたいに目がまんまる笑
「都合、悪い?」
『いや、全くそんなことはないけど…いいの?』
何度も言わせないでよ。笑
さすがに恥ずかしいわ/////
「うん、いいよ。」
『わ、わかった、えっと、とりあえず、親に連絡しなきゃ、だろ?』
「うん、私はもうしたから大丈夫!」
また目をまんまるにして驚いてる。笑
かわいいな。
『え?そ、そうか、わかった。ちょっと、待ってて。』
そう言うと、一旦車から出ていった。
言っちゃった。
大丈夫かな?私。
私は、実は男性経験がない。
恋愛経験じゃなくて、男性経験ね。
詩乃とは、半年くらい付き合ってたし、そう言う雰囲気になりかけたりもしたけど、身体に触れられそうになると、ちょっと怖かったから、ずっと断ってた。
なのに、私は今、恒星に触れたいと思っている。
人によってはまだ早いとか言うと思うけど、私は、そうじゃない。
お互い年頃だもん。
付き合うってことは、そう言う覚悟だって必要でしょ?
【初めてをあげる】覚悟なんて、とっくにできてる。
何故って?恒星が誠実な人だと思うからよ。
きっと、私の初めてを、大事にしてくれると思うから。
『ごめん、お待たせ。えっと、どこに、泊まろうか?』
もぅ、私はちゃんと覚悟してるんだからねっ!
「海沿いに行きましょ?」
『え?あぁ、うん。』
ちゃんと通じたみたい。
よかった。
派手なネオンの建物に車を入れて、受付に進んだ。
私は受付の仕方もお金の払い方もわからないので、手続きは恒星にお願いして黙っていた。
受付って言っても、部屋の写真が貼られたパネルのボタンを押すだけみたい。
そのまま鍵も受け取らずにエレベーターに進んだ。
「なんか、緊張するね。」
エレベーターの中でだんまりなのも気まずいので話しかけた。
『そうだな。』
「それは、私と2人きりだから?それとも、こういうホテルだから?」
この言葉で、恒星の硬い表情がすこし和らいだ。
『両方だよ。こういうところは初めてだから。』
そっか、こういうところは、恒星も初めてなんだ。
部屋に入ると、まずその広さにびっくりした。
全体的に明るいし、特に変なところはない。
私達は、まずソファに座った。
「恒星、今日も運転してくれてありがとね。疲れたでしょ?」
『いや、大丈夫。むしろ丸一日付き合わせてしまった上にこんなことになってごめん。』
何言ってるのよ。
「いいの、誘ったのは私なんだから!」
『ん?まぁ、そうか。えっと、シャワー、先に行くかい?』
そうね、確かにちょっと浴びたいかも。けど、
「お風呂、溜めていい?私、できればお湯に使いたいから。」
『あぁ、もちろん。入れてくるよ。』
優しい。
「ありがとね。」
『タオルとローブも出しておいたから、どうぞごゆっくり。』
「ありがとう。じゃ、お言葉に甘えて。」
覗かないでよ?なんて軽口は叩けなかった。
緊張してきちゃった。。
服を脱いで、お風呂場に入ったら、もっと緊張してきた…
これから、全部見られるんだもん、綺麗にしなきゃ。
「おまたせ。」
ローブを着て出ると、恒星はソファでテレビを見ていた。
振り返った瞬間、表情が変わる。
固まってる。。?
「ちょっと、ジロジロみないでよ」
恥ずかしいじゃない。
『あぁ、ごめん、俺も、入ってくるよ。』
そう言って慌ただしくお風呂に向かっていった。
そっか、恒星も緊張してるんだ。
私は、恒星が戻ってくるのをベッドで待つことにした。
やばい、本当に緊張する。
大丈夫。相手は恒星なんだから。大丈夫よ、私。
『お待たせ』
そう言って出てきた恒星は、同じローブを着てる。
真っ直ぐに、私のいるベッドに向かってきた。
『付き合いたてなのに、こんなことになってしまってごめん。あの、まだ初日だし、今日は、手は出さないから。安心して。気になるようなら、ソファで寝るし。』
誠実な人。ありがとね。でも
「んん、いいの。初日だからって関係ないわ。私、覚悟はできてるから。」
『え?』
また目がまんまる
「いいよ。」
そう言ってベッドに横になった。
『本当に…?』
「うん、恒星が私を愛してくれてるの、ちゃんとわかってるから。ほら、ここにきて」
恒星が、私の上にきた。
ドキドキする。こうやって向かい合ったの、初めて。
『俺、結のこと、ずっと大事にするよ。愛してる。』
うん、ありがとう。
私は、恒星の顔に両手を添える。
いつかそうしたみたいに。でも、あの時とは全然違う。
「ありがとう、あのね、私…」
『ん?』
「初めてだから…優しくしてね。」