【書籍化】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック2巻発売中】
 リカルドをあんな目に合わせた人には決して同情は出来ない。

 でも、自分ではどうにもならぬ境遇の中でどこにもやり場のない憎しみを持つことはどこか理解出来るような気もするのだ。

 生きていると良い事ばかりが続く訳じゃない。どん底まで落ちた時にどんな考えを持つかなんてその人の自由だ。そこから更に落ちていくのも選ぶのも。

 それを聞き何も言わなくなったスイレンを心配したのか、リカルドは頭の上にキスを落とした。

「……ひさしぶりに君の花魔法が見たいな。ワーウィックも長距離を飛ぶ前に腹ごしらえしたいだろうし」

 明らかに彼が話題を変えたかったのがわかってしまったから、スイレンは何も言わずに、それを聞いてキュルキュルと弾んだ声を出すワーウィックの飛ぶ方向に花を浮かべた。

 いくつもの花が開いてワーウィックの口の中に消えるものもあれば、そのまま落ちていくものもある。

 澄んだ青い空に浮かぶ無数の花とそれを追いかける鮮やかな赤い竜。その光景はただただ眩しい。

「ガヴェアに着いたら美味しいものを食べようか。君は何が好き?」
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