【書籍化】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック2巻発売中】
(あの可愛い子、また来ないかな)

 ふーっと大きなため息をついて、広場を見渡しても、あの花籠を持った女の子はいない。

 時折、籠の中を花いっぱいにした女の子を見ることがあったが、あの緑の大きな目をもつ可愛い子ではなかった。祖国のヴェリエフェンディでは花を売り歩くという商売は見かけたことがないのだが、ガヴェアでは一般的なのかもしれない。

 三日ほどリカルドにとって味気のない日々が続いた。

 罵倒され、何かを投げられる事にはもう嫌気がさしていた。もうハニートラップだとしてもどうでも良いから、あの花を抱えている女の子にもう一度会いたかった。

 その日は夜半すぎから雨が降り出して、土砂降りの冷たい雫は檻の中にも吹き込んでくる。リカルドは、すこしだけでも眠ろうと目を閉じた。
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