【書籍化】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック2巻発売中】
 何故だか彼女は自分の上にある空気の傘をリカルドの上に移動させて、自分は服もぐっしょりと雨に濡れた。その姿を見てリカルドはひどく慌てた。

 自分はこのくらいの雨に打たれたところでなんともないが、このいかにも細くて儚げな彼女は体調を崩してしまうかもしれない。首を振った自分を切なげに見つめると、リカルドを心配する言葉を残して、彼女は去って行ってしまった。

 雨の中去っていく彼女を追いかけたくて、檻の中で追いかけられない自分にひどく腹が立った。濡れてしまったあの体を温めてあげたかった。でも、それはこれから先ずっと叶わぬことだ。

 大怪我を負って墜落したワーウィックを庇って命を差し出した事に後悔はない。それだけは言い切れる。

 でも初恋が死の間際だとは、神様は残酷なことをする。

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