【書籍化】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック2巻発売中】
(なんて強くて綺麗な目をした人だろう)

 最初見た時の印象はそうだった。

 大型の魔物用なのだろうか、太い鉄格子の柵の中、一人石や泥をぶつけられても怯むことなくただ前だけを見つめている。その目がとても綺麗で、思わず胸が高鳴ってしまったのだ。

 戦犯と呼ばれる程だ。きっとこの国の人を何人も何十人も殺したのかもしれない。だけどスイレンの目にはその竜騎士リカルドこそが理不尽な目に遭わされている英雄に見えてしまったのだ。

 王都の中では攻撃魔法は禁じられているため、集まった民衆達も石や泥団子を投げることで憂さ晴らしをしている。

 そして、きっと彼は楽には死ねないだろう。敗戦に鬱屈していた民衆の憂さ晴らしをこの場所でさせ、決して逃れられぬ絶望を味わい、隣国の情報を得ても得られなくても、いずれ思いつく限りの残酷な方法で殺されるだろう。

 集まった人々のそんな嘲笑の入り混じった噂話を耳にしながら、それは絶対に嫌だとそう思った。

 檻の中に一人佇む彼は、不思議な人だった。

 一分の隙もなく敵に囲まれているのに、虚勢を張るわけでもましてや怯えている様子も見せない。諦めの表情とも違うただ毅然と前を見つめている。その茶色の目に今映るものがなんであれ、私もその目に映ってみたいと、スイレンはその時に強く思ったのだ。
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