【書籍化】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック2巻発売中】
この家から出て行こうと考えたことは過去に何度でもあった。けれど、このガヴェアは後見人がいないと部屋も借りれない住むところもままならない。唯一自在に使える花魔法も、珍しいがお金になるとは言い難い。例え寒風が吹き込む狭い小屋だって屋根がないよりはマシだとそう言い聞かせて、ここで生きてきた。これからもきっとそうだろう。
藁の上に古びた毛布を被って、スイレンは少しでも温かくなるようにまるくなった。(あの人も……こんな風に寒い思いをしているだろうか。早朝、誰もいない時なら話しかけられるかもしれない。在庫は十分にあるから、明日は種を仕入れに市場に行かなくても良い日だし、広場に行ってみよう)
そう思っても眼裏に浮かぶのはあの強い光を秘めた茶色の目だ。あの目に自分を映すことが出来るなら、それはなんて幸せなことなんだろう。
藁の上に古びた毛布を被って、スイレンは少しでも温かくなるようにまるくなった。(あの人も……こんな風に寒い思いをしているだろうか。早朝、誰もいない時なら話しかけられるかもしれない。在庫は十分にあるから、明日は種を仕入れに市場に行かなくても良い日だし、広場に行ってみよう)
そう思っても眼裏に浮かぶのはあの強い光を秘めた茶色の目だ。あの目に自分を映すことが出来るなら、それはなんて幸せなことなんだろう。