【書籍化】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック2巻発売中】
朝起きてから会いたい人がいるというのは幸せなことなんだと、スイレンはすっきりとした気分で思った。
井戸の水を汲み上げて顔を洗い、小屋で古びた布で体を拭いた。いつもより入念に。彼の前で少しでも綺麗になりたいと自然に思ったからだ。
種から生花を咲かせるのはそう魔力は使わないが、ただ時間はかかる。いつも通りの本数までの花を籠に入れると心を浮き立たせながら広場へと急いだ。
彼にとっては敵地で心を許せるものなど何もないだろうが、すこしでもあの茶色の目に映ることが出来たなら。それはどれだけ幸せなことなんだろう。
早足で急ぐスイレンの目に、大きな鉄の檻が見えてきた。捕らえられているリカルドは勿論、檻の中に居た。中央付近にある椅子に腰を下ろし、どこか遠い目をして前を見つめている。
昨日多数の石をぶつけられたせいか、リカルドは顔や体からいくつかの怪我をしていた。既に赤黒くなって固まってしまっているその血を拭って、治療してあげたいと思ってしまう。太い鉄格子の中、それは叶わないことだけれど。
「あのっ……おはようございます」
スイレンはしんとした静かな薄闇の中、勇気を出してリカルドに話しかけた。
リカルドの強い視線を感じてスイレンの声は震える。じっと見つめられている。それを思うとスイレンは心が沸き立った。両親が亡くなってから、こんなに嬉しかったことはないと思ってしまうほどに。
井戸の水を汲み上げて顔を洗い、小屋で古びた布で体を拭いた。いつもより入念に。彼の前で少しでも綺麗になりたいと自然に思ったからだ。
種から生花を咲かせるのはそう魔力は使わないが、ただ時間はかかる。いつも通りの本数までの花を籠に入れると心を浮き立たせながら広場へと急いだ。
彼にとっては敵地で心を許せるものなど何もないだろうが、すこしでもあの茶色の目に映ることが出来たなら。それはどれだけ幸せなことなんだろう。
早足で急ぐスイレンの目に、大きな鉄の檻が見えてきた。捕らえられているリカルドは勿論、檻の中に居た。中央付近にある椅子に腰を下ろし、どこか遠い目をして前を見つめている。
昨日多数の石をぶつけられたせいか、リカルドは顔や体からいくつかの怪我をしていた。既に赤黒くなって固まってしまっているその血を拭って、治療してあげたいと思ってしまう。太い鉄格子の中、それは叶わないことだけれど。
「あのっ……おはようございます」
スイレンはしんとした静かな薄闇の中、勇気を出してリカルドに話しかけた。
リカルドの強い視線を感じてスイレンの声は震える。じっと見つめられている。それを思うとスイレンは心が沸き立った。両親が亡くなってから、こんなに嬉しかったことはないと思ってしまうほどに。