きみだけのメリー・プレゼント
present1 夢のような約束
最悪だ。今年はそうとしか言えないクリスマスになってしまった。
布団にこもりながらぼんやりとした頭でそう思うと、鼻の奥が痛くなって自分で激しく後悔した。
今日は起きたときから発熱しているせいで、全身の節々が痛くて気だるかった。お母さんにつれられて朝一で病院に行き、昼食用に作ってもらったお粥をなんとか食べて薬を飲んだところだけど、体が楽になるまでにはまだもう少し辛抱が必要そうだ。
座っている元気もあまりなくて食後早々にベッドに戻った私の額に、お母さんが冷却シートを貼ってくれる。
「そういえば美鈴、今日は会えないって朔くんには連絡したの?」
朝から仕事を休んで看病してくれたのは感謝しているけど、お母さん、さすがに今その話題を私に振るのはいただけない。
風邪で弱っているところに、それは精神的ダメージが大きすぎるよ。
さっきからずっと頭の中をぐるぐる回っている悩みに追い打ちをかけないでほしい。
掛け布団と毛布を口元まで引き寄せて、くぐもった声で答えた。
「……まだ……」
「えっ、ダメじゃない! 早く連絡しなきゃ! 朔くんが待ちぼうけになっちゃうでしょう」
「でも約束は夕方だからまだ時間あるもん……」
「けど出かける準備とかもあるから、断るなら早いにこしたことはないでしょうよ」
「うっ……わかってるよぉ」
そんなことわかってる。いつも待ち合わせするとき、約束の時間より必ず早く着いている朔くんだから、きっときちんと早めに準備をしてから出かけているんだろうなって。
だけど私の中のどうしても諦めきれない気持ちが重すぎて、さっきから天秤がぐらぐらと揺れっぱなしだった。
ぐすっと洟をすすると、お母さんは私の心情をようやく察したように声色を柔らかくして言った。
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