辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
 サリーシャはふるふると首を横に振る。ノーラにまで心配をかけさせるなんて、本当になんてダメなのだろう。もっとしっかりしなければと、ぐっと唇を噛みしめた。

 ノーラはぎゅっと眉を寄せてサリーシャを見つめていたが、無理に聞き出すことを諦めたのか、なにも言わずに温かい紅茶を淹れてくれた。
 そっと差し出されたティーカップから立ち上る優しい香りが、心に染みる。

「先ほどローラ様がいらっしゃいまして、刺繍を教えて欲しいと仰っておりましたが、いかがなさいますか? 後は、ラウル様も遊んで欲しいと」
「ローラ様とラウル様が? では、これを飲んだらお二人のところへ行くわ」
 
 サリーシャはノーラに心配させないようににこりと微笑むと、紅茶をゆっくりと飲み干した。あの二人と過ごせば、この陰鬱(いんうつ)な気持ちも少しは晴れるかもしれない。
 

◇ ◇ ◇


 アハマスの領主館の一室。
< 208 / 310 >

この作品をシェア

pagetop