辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
 馬車の前に子どもが飛び出すなど、一歩間違えば死ぬ可能性だってある。偶然だろうか。しかし、偶然にしてはタイミングが絶妙だ。

 セシリオは額に手を当てて考え込んだ。
 部下たちから崇拝されるような人物が、そんな一歩間違えば死ぬかもしれないような危険な真似をさせるものか? なぜ捕らえられた者たちは誰ひとりとして口を割らないのだろうか。

 ──なにかがおかしい……。

 得体の知れないなにかが(うごめ)いているような、妙な胸騒ぎがした。
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