辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
そのとき、「セシリオ!」と背後から声をかけられてセシリオは振り返った。開いたままのドアの向こうからジョエルとメラニーが近づいてくるのが見えた。今ちょうど帰ってきたばかりなのだろう。ジョエルの腕には外出用の上着がかかっている。
「お邪魔しております、義兄上」
「邪魔などと、とんでもない。いつでも大歓迎だ。よく来てくれた」
笑顔で両手を広げたジョエルはセシリオに歩み寄ると、肩をポンポンと叩く。
「今日はセシリオも来たことだし歓迎の晩餐にしよう」
ジョエルは機嫌よく妻のメラニーに声をかける。斜め後ろにいたメラニーも、「ええ、そうね」と笑顔で頷いた。
***
部屋に着いたセシリオは、着ていた上着を脱ぐとそれを無造作にソファーに脱ぎ捨てた。部屋のドアの方を振り返ると、サリーシャがドアの前で立ち尽くしたまま、所在なさげにこちらを見つめている。
「サリーシャ、どうした?」