辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
サリーシャは目を輝かせた。
やっぱり、予想通りだった。
サリーシャが最後に蛍を見たのは、まだマオーニ伯爵邸に引き取られる前のことだ。随分と記憶がおぼろげになってきてはいるが、夜になると淡い輝きを放つ無数の光が飛び交う光景にずっと見入っていたのを覚えている。
「今の季節は見られるかな……。いつ行っても見られるわけではないんだ。けれど、行くだけ行ってみようか? デニーリ地区は大河があるから、その周辺も草原が広がっていて、花の咲く季節は美しい。そこにも連れて行こう」
思案するように宙を眺めていたセシリオはそう言って微笑む。サリーシャは嬉しくなって「はい」と頷くとセシリオの逞しい腕に摺り寄った。
「うふふ。閣下とデートですわね」
「閣下?」
「セシリオ様とデートですわ」
サリーシャは慌てて言い直す。まだセシリオを『セシリオ様』と呼ぶことには慣れない。