辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
 この地域は古くから大河が流れており、土地が肥沃だ。二毛作とは、小麦の収穫が終わった後にその合間の期間を使用して別の作物を育てる手法だ。多くの農家が食い扶持を増やそうと、この耕法に取り組んでいる。馬車から見る限り、遥か向こうまで緑の大地が続いていた。

 そこから小一時間もすると、今度は畜産をしているのか沢山の豚が柵に囲まれた中に飼われている、のどかな風景が広がり始めた。その後、あたりの景色は一変して街道の両側は深い森に覆われた。

「ここはもうアハマスではないのですか?」
「いや、ここもアハマスだ。まだデニーリ地区のはずだ。もう少しするとプランシェ伯爵領になる。アハマスとの境界線には看板があるはずだから、よく見ていると分かる」

 サリーシャは窓から少しだけ顔を出して前を覗き込んだ。見える範囲では看板は見当たらない。
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