辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
 最初に訪れた時、前回王都を訪れた時、そして今回と、もうこの道を通るのも四回目のはずなのに、そんな看板があったことにはこれまで全く気が付かなかった。

「アハマスって広いわ」

 サリーシャは遥か遠くまで伸びる街道を眺めながら呟いた。アハマスはタイタリア王国の北の国境沿いの地域で、形状としては東西に長い。けれど、南下している今ですら二日もかかっている。マオーニ伯爵領の三倍以上の面積はありそうだ。

「そうだな。アハマスは広い。少しずつ、きみを案内しよう。領地内の視察の時に、きみも連れていく」
「はい。閣下の治める土地を、わたくしも見てみたいです」

 サリーシャは笑顔で頷く。
 アハマスは広い。きっと、サリーシャがこれまでに見ている部分は、アハマス全体で見ればほんの一部分でしかないのだろう。
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