辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
 サリーシャがおずおずと足を踏み入れると、そこは前回滞在したよりもだいぶ大きな部屋だった。アハマス領主館のサリーシャとセシリオのリビングルームよりは一回り程小さいが、部屋の中央にはゆったりとしたベルベッドの布張りのソファーと木製のローテーブルが置かれている。そのローテーブルの上にも生けたばかりと思しき花の入った花瓶が置かれ、その横にはフルーツも置かれていた。
 壁に設えられた三つの大きな窓から入る風を受けて僅かに揺れるカーテンは、全体に刺しゅうが施された明るい色合いだ。

 サリーシャは興味深げにきょろきょろと部屋の中を見渡した。

「わたくし、前回の滞在のときは二階のお部屋でしたわ」
「ここは基本的にアハマスの領主館と同じ造りなんだ。三階が領主一家の使う部屋で、二階が客間、一階にはそれほど大きくはないが大広間と厨房、ダイニングやリビングがある。前回も使っただろう?」

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