辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
 婚約披露パーティーが行われたあの日、サリーシャは二人を心から祝福することが出来なかった。自分の未来の先が見えず、二人を心から祝福する心の余裕を失っていたといった方がよいかもしれない。
 けれど、一年の時を経て、サリーシャは彼らを心の底から祝福した。大切な友人であり、自らが忠誠を捧げるべき未来の国王と王妃。彼らが末永く幸せでありますようにと、心から祈る。

 チラリと横を窺い見ると、隣にいるセシリオは真っ直ぐに二人を見つめていた。胸の前に両手をあげて、大きな拍手を贈っている。
 きっと、自分がこんな風に思えるようになったのはこの人のお陰なのだろう。その広く優しい包容力で、いつもサリーシャを安心させてくれる。セシリオが隣にいてくれるだけで、なにも心配いらないような気がしてくるのだ。

 ──二人とも、お幸せに。

 サリーシャは二人に大きな拍手を贈った。
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