辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
 大聖堂の出口へと見えなくなった二人を見送り、もう一度隣をチラリと見る。今度はサリーシャの視線に気付いたセシリオがこちらを向き、視線が絡まった。
 ヘーゼル色の瞳が柔らかく細まる。サリーシャはトクンと跳ねた胸にそっと手を当て、ほんのりと頬を染める。そして、満面に笑みを浮かべて微笑んだ。



 そして二日目。
 今日はお祝いの舞踏会が行われる。会場となる大広間はサリーシャがかつて背中に大けがを負った、あの場所だ。通い慣れた王宮内の廊下を進み、会場を目の前にしていざそこに足を踏み入れようとしたとき、サリーシャはゾクッとした感覚に襲われた。

 ──痛い、寒い。痛い、怖い。痛い、痛い……

 忘れていたはずの感覚がよみがえる。
 体の奥底から急激に恐怖心が沸き起こり、全身を染め上げる。

 ──また、刺されたら……

 そんなことはあるわけがない。
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