辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
 この日のためにセシリオから贈られたのは、焦げ茶色とアイボリー色のコントラストが見事な、豪華なドレスだった。全体にアイボリー色のレースを入れることによって、落ち着いた色合いながら華やかな仕上がりになっている。
 さらに、首にはウェディングドレスで使用した真珠を利用して作ったネックレスが輝いている。そのドレスの焦げ茶色の布地が、サリーシャの手の中でぐしゃりと潰れた。

 ──大丈夫。大丈夫よ……

 サリーシャは何度も何度も、自分に言い聞かせるように、心の中で呟いた。

 足を踏み出そうとするのに、震えて前に出なかった。無言でサリーシャの様子を見守っていたセシリオは、あたりを見回してサリーシャの腰を抱き寄せる。そして、大広間入り口の横にある参加者用の控室の方へ促した。

「サリーシャ。気分が悪いなら、今日は止めておくか?」

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