【短編】猫が運んだ淡い初恋
もう一つの出会い
◇◇
その一ヶ月後。
「「あっ」」
土曜日。そして、二回目のワクチン接種日。
またまた病院近くの公園で、市瀬さんとベルちゃんに遭遇した。
「今日はタマちゃんも?」
「はい。怯えちゃって……」
「あー、うちもです。バッグに入ってから全然顔見せてくれないんですよ」
東屋に向かい、腰を下ろす。
先月の注射がよっぽど怖かったのか、キャリーバッグに入った瞬間、不安で震え出したマル。
さらに今回、タマもビクビクしていたため、一緒に連れてきたのだ。
「心が痛いけど、元気で過ごすためにも打ったほうがいいしね……」
「ですよね……」
この前は元気だったベルちゃんも、今日は静かに丸まっている。
まだ子どもだもんな。
いきなり知らない場所に連れて行かれて、大勢の動物や人間に囲まれるだけでも怖いのに、さらに痛い注射を打たれるんだ。
俺ら人間だって注射が苦手って言う人いるし。
そりゃ怖いに決まってるよ。