【短編】猫が運んだ淡い初恋
会わせたら少しは緊張が解けるかなと思い、網状になっている側面を向けてみたものの……反応なし。
というかまず、お互いにお尻を向けているから、顔を合わせる気がそもそもない。
全然動いてなくない? もしかして寝てるのかな?
だったら無理に起こすのも悪いか。
「にゃー」
「ん……?」
すると突然鳴き声が聞こえ、バッグの中を覗いた。
起きては……なさそう。寝言かな?
でも、寝言にしてはけっこうハッキリ聞こえた気がするんだけど……。
「にゃー」
もう一度聞こえた小さな鳴き声。
バッグの中から聞こえた声ではないとわかり、彼女と顔を合わせた。
「どこかに猫ちゃんがいるみたいだね」
「ですね。大丈夫かな」
今日は曇っているが、今月梅雨入りしたので、最近はずっと雨が続いている。
猫は水が苦手だからなぁ。
この辺は雨避けできる場所もあるけど、湿気が多い季節はやっぱり萎えちゃうよね。