【短編】猫が運んだ淡い初恋
しばらく談笑していたら、ポツポツと雨音が。
まだ時間前だけど、酷くならないうちに戻ることに。
「にゃー」
バッグを両脇に抱えたその時、雨音に紛れて再び鳴き声が聞こえた。
寒いのかな。それか友達か家族を捜してるのかな。
なんて心配しつつ、猫の姿がないか辺りを見渡してみると、
「っ……!」
低木の隙間から見えた白いビニール袋が、モゾモゾと不規則に動いている。
まさか……まさかそんなことは……。
恐る恐る近付いて中を覗き込むと──四匹の子猫達が弱々しく鳴いていた。
「えっ……もしかして捨て猫⁉」
「だと思います……」
異変に気づいて駆け寄ってきた市瀬さんと顔を合わせる。
片手で抱えられるサイズのキジトラ柄の子猫達。
袋は濡れていて、寒いのか少し震えている。
「酷い……多分、近くに病院があるから、誰かに拾ってもらえると思ったのかもしれないね」
「だからって、こんな袋に入れるなんて……」