【短編】猫が運んだ淡い初恋
経験値の差
◇◇
宿題に追われる日々が続いた、八月上旬の木曜日。
「お、須川! おはよう!」
「おはようございます」
校門の前に立っている高倉先生と挨拶を交わした。
ご機嫌な先生を周りの生徒達がチラチラ見ながら通り過ぎていく中、堂々と話しかける。
「コタロウ君は元気ですか?」
「もちろん! ご飯モリモリ食べてるぞ。みんな毎日ニコニコしてる。ただ、子ども達が宿題放棄してずっと遊んでるのがちょっと困ってるかな」
「ハッハッハ〜」と呑気に笑う先生。
コタロウ君が楽しく過ごしてるようで一安心。
したいところだけど……指導力落ちてませんか⁉
可愛いのはわかるよ! 俺も叱られるくらい夢中になってたから。
だけど……。
「先生、可愛いのはわかりますけどしっかりしてください」
「わかってるよ。これでも宿題は一切手伝わないって決めてるからね」
大丈夫かなぁ……。ちょっと怪しい気がする。
厳格な先生が甘々になっちゃうなんて思ってもなかった。
猫パワー恐ろしいな。俺も気をつけないと。