【短編】猫が運んだ淡い初恋



学校が終わり、帰宅して昼食を取った後、自転車に乗って本屋さんへ向かった。

動物関連の棚から猫の本を手に取る。


理科の自由研究で、タマとマルの観察日記を書いているんだけど、もう少し猫の生態を詳しく書きたいんだよね。



「あれ? 須川君?」


「はい? えっ、市瀬さん⁉」



目新しい情報を求めて本をめくっていると、制服姿の彼女に遭遇した。



「学校帰りですか?」

「うん。登校日だったの」

「そうなんですか? 僕も今日登校日だったんですよ~」



白シャツに黒のスカート、そして赤いネクタイと、綺麗めでかっこよさがある制服。

すごく似合ってるけど、その制服って……。



「市瀬さんって、黒金(くろがね)だったんですね」



地元の中心部にある黒金高校。

生徒数が多く部活動も盛んで、校内の施設も充実しており、地元以外の人にも広く名が知られている。

そのため、進学先でここを希望する人が多いんだとか。
< 28 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop