【短編】猫が運んだ淡い初恋
学校が終わり、帰宅して昼食を取った後、自転車に乗って本屋さんへ向かった。
動物関連の棚から猫の本を手に取る。
理科の自由研究で、タマとマルの観察日記を書いているんだけど、もう少し猫の生態を詳しく書きたいんだよね。
「あれ? 須川君?」
「はい? えっ、市瀬さん⁉」
目新しい情報を求めて本をめくっていると、制服姿の彼女に遭遇した。
「学校帰りですか?」
「うん。登校日だったの」
「そうなんですか? 僕も今日登校日だったんですよ~」
白シャツに黒のスカート、そして赤いネクタイと、綺麗めでかっこよさがある制服。
すごく似合ってるけど、その制服って……。
「市瀬さんって、黒金だったんですね」
地元の中心部にある黒金高校。
生徒数が多く部活動も盛んで、校内の施設も充実しており、地元以外の人にも広く名が知られている。
そのため、進学先でここを希望する人が多いんだとか。