【短編】猫が運んだ淡い初恋

「須川君はここに行きたいなって学校はある?」

「いやぁ……まだわかんないですね。でも、黒金に行きたいって人は結構多いです」

「そっかぁ。私の中学もクラスメイトの半数が希望してたよ。さすが人気校だよね」



部活の先輩から高校の話は時々聞いていたので、ぼんやり考えたことはあった。


黒金は平均より少し上の学力レベルだから、頑張って勉強すれば合格圏内に入れるし、家からバスで行ける距離。


だけど、人気な分競争率が高い。


成績の変動が激しそうだから、心が強くないとすぐ落ち込むと思う。


「スポーツやってる人間がビビってんのかよ」ってツッコみたくなるところだけど……。

部活も習い事も、毎日癒やしがないとやっていけない自分には少し勇気がいる。



「市瀬さんはメンタルが強いんですね。かっこいいです」

「ええ⁉ そんなことないよ〜。でもありがとう」



照れ臭そうに笑った彼女。


あれ……? なんでだろう。笑った顔は何度も見たはずなのに。

今、胸がキュンってした……?
< 31 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop