【短編】猫が運んだ淡い初恋
「須川君はここに行きたいなって学校はある?」
「いやぁ……まだわかんないですね。でも、黒金に行きたいって人は結構多いです」
「そっかぁ。私の中学もクラスメイトの半数が希望してたよ。さすが人気校だよね」
部活の先輩から高校の話は時々聞いていたので、ぼんやり考えたことはあった。
黒金は平均より少し上の学力レベルだから、頑張って勉強すれば合格圏内に入れるし、家からバスで行ける距離。
だけど、人気な分競争率が高い。
成績の変動が激しそうだから、心が強くないとすぐ落ち込むと思う。
「スポーツやってる人間がビビってんのかよ」ってツッコみたくなるところだけど……。
部活も習い事も、毎日癒やしがないとやっていけない自分には少し勇気がいる。
「市瀬さんはメンタルが強いんですね。かっこいいです」
「ええ⁉ そんなことないよ〜。でもありがとう」
照れ臭そうに笑った彼女。
あれ……? なんでだろう。笑った顔は何度も見たはずなのに。
今、胸がキュンってした……?