【短編】猫が運んだ淡い初恋
大きな決断
◇◇
「ソウ〜! ちょっと来て〜!」
「はーい」
三匹目の引き渡し先が見つかった日から、一ヶ月が経った平日の夜。
明日提出する宿題をしていると、下にいる母から呼ばれた。
「何?」
「大事な話があるからこっちに来て」
「? うん」
リビングに入り、足元にやって来たマルを抱っこしてダイニングテーブルに着席。
何の話だろう。学校関連のことかな?
でも何もやらかしてなかったと思うんだけど……。
「さっき市瀬さん達から────最後の猫は、自分達が引き取ることにしたと連絡が来た」
全員着席すると、タマを抱えた父が静かに口を開いた。
笹森さん達が選んだのは女の子って聞いたから、引き取るのは男の子ってことか。
「なんで? 欲しい人が出てこなかったから?」
「いや、今まで希望者は何人かいたんだ。
だが、対面する度に嫌がってて、無理矢理引き渡すことができなくて最後まで残ってしまったらしい」