【短編】猫が運んだ淡い初恋
◇◇
「こんにちは。お久しぶりです」
「こちらこそ。久しぶり」
十二月上旬の日曜日。
病院の駐車場にて最後の対面が行われた。
「大きくなりましたね」
「もう丸七ヶ月、八ヶ月近いからね。須川君もまた伸びたんじゃない?」
「こないだ保健室で測ったら少し伸びてました」
彼女に抱えられているトラ猫君に近づき、ゆっくりまばたきをしてご挨拶。
初対面から半年以上経っていたため心配だったが、手のにおいを嗅がせたからか、おとなしい。
怖くないって安心してくれたのかな。
「あのね、須川君にお願いしたいことがあるんだけど……この子に名前をつけてほしいの」
「え、いいんですか?」
「うん。最初に見つけたから。みんな名前を貰ったから、この子にもつけてあげたいなって思ったの」
なるほど……だから俺が呼ばれたのか。
どうしよう。まさかこんな重要な役割を任されるなんて思ってなかったから全然浮かばない。