【短編】猫が運んだ淡い初恋
────お互いに頭を下げ合ったところで時間が来たので、名残惜しいがお別れすることに。
「じゃあねトラ吉。元気でね」
「にゃあー」
最後に撫でたら、返事をするように鳴いてくれた。
あぁ、どうしよう。泣きそう。
「市瀬さん、本当にありがとうございました」
「こちらこそ。たくさん協力してくれて本当にありがとう。短い間だったけど楽しかったよ。また会おうね」
優しい笑顔を向けられ、さらに感情が高ぶる。
必死に抑えて笑い返し、市瀬親子とトラ吉を見送った。
今度会う時は、タマとマルを紹介するね。
俺のこと、覚えててくれてたらいいな。
幸せになるんだよ。
◇◇
その数ヶ月後。新しい季節と共に、我が家の猫達は無事に一歳を迎えた。
母宛てに連絡が来て、ベルちゃんも一歳になったらしい。
春休みに入ってしばらくすると、定期健診のお知らせが届いた。
だが、部活が忙しくて付き添いに行けず。
そのまま二年生に進級した。