【短編】猫が運んだ淡い初恋
「須川! おはよう!」
「おはようございます」
新学期が始まって二週間が経ったある日。
毎度のごとく、校門で高倉先生に会った。
「いきなりで悪いが、昼休みに生徒指導室へ来てくれないか?」
「何かお話ですか?」
「いや、こないだコタロウの誕生日パーティーをして、その時の写真をあげたいと思ってな」
「わかりました。お昼ご飯食べた後に伺います」
先生は相変わらず、顔を合わせる度にコタロウ君の話をしてくる。
張り紙事件の後、指導がより厳しくなり、そのおかげで校内が荒れることはなくなった。
噂もだいぶ減ったんだって。
「あ、おはよう須川! 昨日の写真ありがとな!」
「あぁ! 綺麗に撮れてたでしょ?」
教室に入り、友達と挨拶を交わす。
年が明けた冬休み、ようやくスマホデビューを果たした俺は、タマとマルの写真を撮っては友達に送っている。
従兄弟からもコジロウ君の写真を時々貰っていて、部屋で一人、「可愛いー!」って叫ぶこともしばしば。
その後の中学時代は、毎日猫達に癒やされながら、部活と勉強に励む日々を送り続け、彼女と一度も会うことなく過ごしたのだった。