【短編】猫が運んだ淡い初恋
「えっ……市瀬さん……?」
聞き覚えのある懐かしい声が聞こえてパッと顔を上げると、目の前に大人になった彼女が立っていた。
「久しぶりだね。元気だった?」
「はい……お久しぶりです」
突然の登場に頭が追いつかない。
だって、今ちょうど考えてた人が目の前に現れてるんだよ?
っていうか、こんなすぐシンクロみたいなことが起こるなんて誰も想像できないって。
「須川君も誰かと待ち合わせしてるの?」
「はい。友達とです」
「そうなんだ。私もここで待ち合わせしてるの。お互いに待ち人が来るまでちょっと話さない?」
「は、はいっ。もちろん」
本当に、市瀬さんだ……。
えっと、あの時は中一と高一だったから……今は二十歳かな? 大学二年生の年齢か。
髪の毛はゆるくウェーブがかかっていて、唇はほんのり赤く、目元にはラメが光っている。
当時よりもぐんと大人っぽくなった姿に心臓がドキッと音を立てた。