【短編】猫が運んだ淡い初恋
「いや〜、本当大きくなったね。最初は私より低かったのに、見上げるくらいにまで成長するなんて」
「市瀬さんも少しは伸びたんじゃないんですか?」
「一センチだけね!」
そのセリフ、久しぶりに聞いたなぁ。
見た目は結構変わったけど、中身は昔と変わってなくてホッとした。
「あ、そうだ、連絡先交換しようよ! 直接写真送れるし!」
「はいっ! もちろん!」
言い出そうと思ってたことを先に言われ、さらに心が踊る。
好きだけど、付き合いたいわけではなくて、ただ交流を深めたいだけ。
だってあっちは大学生か社会人。対して自分は高校生。
大人がお子ちゃまを相手にするはずがないんだから。
……だけど、俺もあと二年ちょっとで二十歳。
大人になったら、少しは意識してくれるかな……?
少し先の未来に期待を寄せたのもつかの間。
「せーらちゃんっ、遅れてごめんね」
「あ! 零士君!」