【短編】猫が運んだ淡い初恋
と、意見して、水筒のお茶を一口。
すると……。
「ってか、ずっと気になってたんだけど……須川の初恋っていつ?」
「っ……!」
唐突な質問に目をかっ開いた。
危ない、お茶が気管に入るところだった。
「急にどうしたの」
「須川って、頭も性格も、顔もスタイルも良くてモテる要素だらけなのに、女っ気がないじゃん。彼女もいたことないって言ってたし。
だから、実玖以外の人を好きになったことあるのかなって」
なるほど。
確かに、小中学生時代はスポーツ漬けの日々を過ごしてきたため、一度も交際したこともなければ、告白の経験もない。
友達や部活仲間には、『恋愛に興味なさそう』『女の影全然ないよな』って言われ続けてきたっけ。
「もしかして、実玖が初恋?」
「違うよ。清水さんは二人目だよ」
高校生になった今も、あまり恋愛してるイメージがないと言われているけれど……これでも一応、初恋はあった。
今から四年前──今年でもうすぐ五年経つかな。
中学生になって一ヶ月が過ぎた頃だった。