【短編】猫が運んだ淡い初恋
初恋の話
出会い
◇◇
「今日はいい天気だね~。ちょっと暑いくらいだよね」
五月中旬の土曜日。
両腕で抱えているペット用のキャリーバッグに声をかけながら、公園の広場を歩き回る。
すると、サッカーゴールの近くで、ボールをパスし合っている小学生くらいの子ども達を見つけた。
「楽しそうだね〜。今度ボール買ってあげるから、一緒に遊ぼうね」
はしゃぐ子ども達を眺めながら再び声をかけ、バッグのチャックを開ける。
「マル、外見てみる?」
中で丸くなっている、小さな黒猫。
今月うちにやってきたばかりの、新しい家族の男の子だ。
「犬も猫もいないから大丈夫だよ」
「にゃあー」
バッグの中から弱々しい返事が聞こえた。
うーん、まだ少し震えてるなぁ。
今日は健康診断の日。
母と二人で動物病院にやってきた。
だけど、マルが他の動物達に怖がってたから、今、順番が来るまで近くの公園で気分転換させているんだ。