『オトメ♡研究同好会』の恋多き日常
俺の親友と幼馴染みの恋
 一年生が居なくなったところでそろそろ部

活に行こうと思い、茂みの中から抜け出し

た。部室棟に足を踏み入れて、肩がぶつかり

そうなほど狭い階段を上り、大きく息を吸っ

てからドアノブに手を掛ける。そして、勢い

良くドアを開ける。ようやく、本日の活動開

始だ。



「やぁやぁみんな、今日も元気に活動してい

るかい?」

「陽太先輩、こんにちは。みんなって、ここ

には私しか居ませんけど」



彼女はもう一人の部員、清水結月《しみず ゆ

づき》。俺の一歳下の、可愛い後輩だ。ちな

みに、これで部員が全員揃った。去年までは

俺らのほかに先輩がいたから、『オトメ♡研

究《《部》》』の看板を背負うことができて

いたのだが。突然生徒会の奴らがやって来

て、看板と大きな部室と、元々無いに等しか

った部費を、回収されてしまった。



「そんな悲しいこと言うなよ。ときにゆづち

ゃん、今日も早速仕事だよ」

「参拝者は、どなたですか?」

「参拝者って、神社かよ」

「…」

「ゴホン。ええと、一年三組の山崎 茉莉さん 

だよ」

「いきなり新入生ですか。では、情報収集に

参りましょう」

「あぁ。切り替え早いな」



 翌日、俺たちは茉莉の後を付けて回った。

というのも、まだ茉莉についての情報が全く

無かったからだ。



「陽太先輩、私たち、通報されませんよ

ね?!」

「大丈夫だと思うが。バレなければ」

「バレたらまずいんですか?どうしましょ

う。先輩、責任取ってくださいね」

「は?笑顔で怖いこと言うの、止めろよな」



ことが起こったのは、俺らが呑気に喋ってい

た、まさにそのときだった。



「「あ」」



茉莉がこちらを振り返ったのだ。目まで、ば

っちりと合ってしまった。これはまずい。逃

げようとして茉莉に背を向けた。だがすぐ

に、その必要が無かったことに気づく。なぜ

なら、茉莉の視線の先に居たのは俺らではな

く、とある男子生徒だったのだから。その男

子生徒というのは、学校中の有名人、櫻井湊

《さくらい みなと》だった。悔しいことに、

超モテる。俺が何度、湊ファンの当て馬にさ

れたことか。ちなみに、俺の幼馴染みであ

り、世界一分かり合える心の友でもあるのだ

が。そんなことより、茉莉だ。なぜ、茉莉が

湊を凝視していたのか。もしかしたら、湊の

爽やかさに惹かれてしまったのだろうか。も

しそうだとすれば、俺が湊と茉莉をくっつけ

れば万事解決なのでは…。ニヤリ。



「という訳で我らオト研は、湊に話を付けに

行くことが決定したぞ。レッツゴー」

「どういう訳なのか、存じ上げませんが。陽

太先輩のことですし、また碌《ろく》でもな

いことを考えていらっしゃるのでしょう。先

輩にお任せするということで、ゴー」

「お、今日のゆづちゃんはノリがいいな」

「ちょっと、先輩五月蝿いです。バレてしま

うではないですか」

「照れんなよ」

「照れてないです」



 そして向かった先は、湊がいる三年一組。

人が多くて、とてもじゃないけれど湊を見つ

けられそうにない。だから、力いっぱい叫ん

だ。



「湊ー居るかー。俺だよ俺、俺」

「陽太先輩、オレオレ詐欺感が出てしまって

いますよ…」

「ははっ、確かに」

「あ、湊先輩がいらっしゃいましたよ」



俺の友人が、爽やかな笑顔を振り撒いて手を

振りながら、こちらにやって来た。



「おぉ、陽太か。どうした?」

「昼飯、一緒に食おうぜ」

「いいよ。じゃあ、屋上に行こうか」

「「賛成」」

「仲いいね、お二人さん。フフッ」



湊は、俺以外に対しては爽やかイケメンなの

に、なぜか俺にだけブラックなんだよなぁ。

コイツ、意味深長な笑みなんか浮かべやがっ

て。
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