『オトメ♡研究同好会』の恋多き日常
 屋上に上がると、真っ青な空が視界いっぱ

いに広がっていた。湊は、フェンスの近くに

歩み寄り、購買で買ってきたパンを袋から取

り出した。そのとき、強い風が、俺らの間を

擦り抜けた。はらり。何か、湊のポケットか

ら紙のようなものが落ちた。湊は全く気がつ

かずに、メロンパンを頬張っていた。そし

て、再び強風が吹いた。俺を釘付けにしてい

た、あの紙が、ゆづちゃんの足元へと飛んで

行った。それを急いで拾ったゆづちゃんの動

きが、ほんの一瞬、止まった。



「陽太先輩、これ…」



気になったので、俺も覗くと、それは一枚の

写真だった。



「湊先輩と、茉莉さん…?」

「おそらく、そうだな」



そこに写っていたのは、手を繋ぎ、満面の笑

みを浮かべている、幼稚園児と小学生くらい

と思われる二人だった。顔を上げて、湊の方

を見遣る。奴はまだ美味しそうに、メロンパ

ン二個目を頬張っていた。呑気な奴め。それ

にしても、どういうことだろうか。湊と茉莉

は、幼いころから面識があったということ

か。そういうことなら、話は簡単だ。



「陽太先輩…、一人で突っ走らないでくださ

いね…」

「だ、大丈夫だ。任せとけ」

「湊、この写真、今飛んで来て。た、たまた

ま見えてしまったのだが…、茉莉のことをそ

の、す、好きなのか?」

「あぁ、うん。好き、かな」

「本当ですか?!それなら、どうしてお付き合

いなさらないのですか?」

「ゴホン…、何でっていうか、君たちこそ何

で急にそんなこと言いだすのかな…」

「いやぁ、その、まぁ…応援!応援したいと

思ったからだ」「私もですよ、湊先輩」

「そう、ありがとう。実はね、茉莉ちゃんと

は家が隣同士で、幼馴染みなんだ。だから昔

は凄く仲良しだったんだ。でも、しばらく会  

っていなかったから、久しぶりに会っても何

を話していいか、わからなくて。顔を合わせ

るとなると、気まずくなってしまうんだよ」

「それなら、私たちが協力しますよ」

「あぁ、湊には幸せになってもらいたいから

な。よし、じゃあさっそく俺とゆづちゃん

で、茉莉を連れて来よう。湊はここで待って

ろよ」

「え?あ、うん。よろしく」



湊と茉莉の写真を見つけてしまったせいで、

昼飯を食い損ねた…。でも、おかげで上手く

いきそうだし、良しとするか。

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