【短】20:40の暇つぶし。




広い駐車場、ポツポツと車は停まっているけれど客のものではないだろう。

店員のものでもなく、無断駐車だと思う。


だけど誰も気にしない。

そーいうのは田舎の良いところだとも私は思う。



「今日…飛び降りようとして、失敗したんです」



独り言のようにつぶやいた。

別に聞いて欲しくて言ったわけじゃなく、そのまま逃げないように会話で引き留めているようなもの。


とりあえず話していれば、かじかんだ手も解れるんじゃないかって。



「なんで?」



失敗した理由?
それとも、飛び降りようとした理由?

まさか会話が続けられるとは思っていなかった。


その返事が来るなんて思っていなかった。

むしろ死のうとした学生のことなんか興味ないと、冷たくあしらわれるとばかり思ってた。



「理由はとくにないですけど」


「どこから飛び降りようとした?」


「…マンションのベランダ」



本当はそこだけじゃない。

飛び降りだけじゃない、飛び込みもしようとした。


帰りの電車で特急列車のレール、そのままスッて落ちるだけでいいんだって。

だけどその前に同じことをした人が居たから、なんか出来なくて。



< 6 / 16 >

この作品をシェア

pagetop