離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 ホテルが完成し、レセプションと、プレオープンを終えて、後は来週のグランドオープンを待つばかり。

 火山活動も落ち着いて来たので、グランドオープンにはシエナも招待して、一緒に祝おうと考えていた。

 マリー家族ももちろん招待したので、喜ぶ顔が見れるだろう。



 しかし……、ここ二、三週間、何故か電話もメールも繋がらない。

 オープンに向けて、かなりの忙しさで、連絡が出来ない事もあったが……

 会いたい時に、すぐに会えない距離が、もどかしい。


「プルル……ッ、プルル……ッ」

 携帯が鳴って、慌てて出る。

「蓮斗さん? 貴方、明日帰国よね? 」

「そうですが、何か? 」

 思った相手ではなくて、肩を落として、ガッカリとする。

「ねえ、シエナさん、一向に妊娠する気配が無いんだけど、いつになったら孫を抱かせてくれるの? 貴方達、上手くいってないんでしょ? 隠していても、親には直ぐにわかるのよ」

 俺は、ハァーーーーッっと深い溜息を吐く。

「何度言ったらわかるんですか。 俺達には二人のペースがあるんだ、親だって言うなら、暖かく見守ってください。 まさかと思いますが、シエナには、子供子供、言ってませんよね?! 」

 シエナと連絡がつかなくて、イライラしていた俺は、八つ当たり気味に声を低くして、怒りをあらわにした。

「や、やあね、そんな怖い声して。 い、言ってないわよ」

 「今日はまだ……」と、小さく囁いた声は、俺の耳に届かなかった。


 シエナの声が聞けず、俺はまた一人、寝酒を飲む。

 何度目かの電話で、留守電に、「明日帰る」と伝えて、急ぎ帰国した。

 連絡が取れないからか、嫌な胸騒ぎがして、早くシエナに会いたかった。

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