離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 「…… ヤバッ 昨日より、更にブスになってる」

 職場に着くなり、チーフが額に皺を寄せた。


 今朝、起きて部屋の中を見回したが、昨夜、蓮斗さんが帰宅した様子は、なかった。

 当たり前だけど、蓮斗さんからの連絡はなく、そのまま出国したのかどうかも、わからなかった。

 代わりに、携帯には山の様な、お義母様からの着信と留守電が入っていた。

 今の弱った状態で、あのお義母様と話すのは、自殺行為だなと思い、折り返し電話はスルーさせて貰った。


 泣きたいだけ泣いて、相変わらず、姿を探してしまうけれど、顔を合わせなくて済むと思うと、ホッとした。

 出勤の準備をしようと、鏡を見て、驚愕した。

「…… なんじゃこれ?! 」

 号泣して、心は少し晴れたが、顔はパンパンに浮腫んで腫れ、目はこれでもかと、腫れすぎて、半分くらいしか開いていない。

「……ヤバい、こんな顔で、お客様の前に出れないわ! 」

 慌てて、冷凍庫から保冷剤を出して、出勤ギリギリまで冷やしたが、やはり、敏腕チーフの目は誤魔化せなかった。
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