離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「お義母様?! いらしてたんですね…… 」
眉毛と目尻を吊り上げて、鬼の形相で、迫って来る。
ビクッと、思わず身体を窄める。
「蓮斗さんは?! 蓮斗さんはどこ?! あなた一緒じゃないのっ?! 」
「…… いえ…… 、どうか…… なさったんですか? 」
あまりの剣幕に、眉を顰めて、伺う。
「今日のパーティーで、蓮斗さんは挨拶する筈だったのに、姿を見せなかったのよ?! ううん、今日だけじゃなく、ここ一週間、誰も蓮斗さんの姿を見てないし、連絡も取れないのよっ! あなた知ってるんでしょ?! 」
(…… 離婚の事は、まだ聞いてないのかな…… ? )
「…… 私は何も…… 。 ここ数日は連絡は取っていなくて…… 。 急な仕事…… とかじゃ、ないですか? 秘書の方なら、スケジュール把握されてるかと…… 」
私の返事に納得出来なかったのか、お義母様は、イライラして声を上げた。
「本当に、役に立たない嫁ね! こんな事なら、結菜さんと結婚させるべきだったわ!! そしたら、今頃、可愛い孫をこの手に抱いていたでしょうに!! 」
フンッと高圧的に、一瞥すると慌ただしく、出て行った。
「…… すげー、強烈…… お前も大変なんだな…… 」
黙って、事の成り行きを見守っていたチーフが、ボソリッと呟いた。
ハハハハッ……、と、私は苦笑いをする。
(そうだよね、蓮斗さんが私以外と結婚してたら、こんなに苦労せずに、子供が出来てたかも知れないんだよね…… )
わかっていた事とは言え、面と向かって言われると、弱っている今は余計に堪えて、暗く重い気持ちが湧き上がって来る。
暗く黒い気持ちに囚われないように、
「フーーーーッ」
っとゆっくり深呼吸する。
「それにしても、あの社長が、お前にも連絡して来ないとか、あんなに力を入れてた、大事なホテルのお披露目にも、挨拶に訪れないなんて、よっぽど外せない用事でもあったのか」
「そうね…… 」
(確かに、私にはともかく、三年近く、今日の日の為に頑張って来たのに、オープンの挨拶に訪れないなんて、蓮斗さんらしくないわね…… 。 これより大事な事って…… )
頭を巡らせてみたが、一緒にいた時点の記憶では、これ以上の予定は見つからなかった。