離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます

「今夜は蓮斗さんが、私をエスコートしてくれるのよ、わ、た、し、を！　選ばれたのよ、この私が！！　」

　ニヤリッと笑い、ツンッと上を向いて、白鳥さんは、私を見下した。

「今日のパーティーのヘアメイクは、貴方にお願いするわ。　蓮斗さんに相応しい装いに、し、て、ちょうだい」

　そう言って、白鳥さんは、蓮斗さんに近づいて、掌を取り、指を絡める。

「ね、蓮斗さんはどんな髪型が好き？　」

　首を傾げて、ジッっと、彼を見つめている。

　チリッとした赤黒い炎が、身体の奥底から湧き上がって、あそこにいるのが何故自分ではないのかと、悲しさと愛しさで、胸の中がグチャグチャになる。

　

「…… あの仕草は、あざといな」

「あざと可愛いですね」

　チーフと、スタッフの一人が呟いた。

「……え？　普通に、可愛くないですか？　」

　白鳥さんと蓮斗さんのやり取りを、羨ましいな、と見ていた私は、素直な感想を口にした。

「シーちゃん、チョロいな」

「チョロいですね」

「でも、そんな天然なとこが、堪らないんだけどな…」

　口角を上げて、一人、小さな声でボソボソッと、呟いたチーフの言葉に、スタッフがジト目を向ける。

「お前もな！　」