離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます

「それより、どうするんだ、あの女のヘアメイク、やるのか？　なんなら俺代わるぞ」

「そうよ！　奥さんはシエナさんなのに、図々しい！！　私がやってやるわ！　」

「…… いえ…… もう奥さん…… じゃ、ないので……」
　

　二人の心遣いに、もうすぐ離婚する事を伝えてない事に、チクリッと良心が痛み、ポロッと出てしまった。


「お前、なんか隠してるな？　」

　二人にジーッと見つめられ、私は思わず、目をキョロキョロと揺らし、目を逸らす。

「今は仕事中なので…… あ、後で…… 」


　気まずさから、カクカクッと変な動きで、二人から距離を取ろうとした私に、白鳥さんがイライラッして声を上げた。

「ちょっと、早くやってちょうだい！　っもう、ほんと使えないわね！　結婚して私が妻になったら、ブライダル部門の、従業員の教育を徹底して、貴方みたいな使えない奴は、みんなクビにするわ！　」


　蓮斗さんの妻になるのは良い。

　だけど……、仕事に関しては、私もここにいるスタッフは、ううん、日本にいるスタッフも含めて、皆んな誇りを持って、最高のものを提供しているつもりだ。

　そこに関しては、譲れないプライドがある！

　私はプロだ！

　どんな相手にも手は抜かない！

　たとえ、それが白鳥さんであっても！

　私は、一度グッと歯を食い縛り、直ぐに、思いっきりの、営業スマイルを彼女に向けた。