離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「おめでとう! 妊娠してるわよ」

「……… はっ?! 」

 口をポカンと開けたまま、自分のお腹に手を当て、女医とお腹を二度見する。

「…… え? ええ?! だって生理…… 」


「おそらく着床出血ね。 受精卵が着床する際に起こる出血のことよ。 妊娠初期に起こる出血で、丁度、生理予定日と大体、同じ時期に出血するのよ。 一日〜四日位で出血も、終わる事が多いから、生理と勘違いする人も多いの」

「に、妊娠…… 」

 突然の事に、時間が一瞬止まり、言葉を失った。

「イヤイヤイヤ……、う…… 嘘でしょ…… 」

 狼狽えて、掌を口に当て、顔面蒼白の私を覗きこむ。

「帰国したら、ちゃんと、産婦人科行って診てもらいなさい」

 呆然として、その場に立ちすくむ私には、女医の言葉が、上手く頭に届かない。

「妊娠……、ダメ、絶対…… 」

口をパクパクさせ、呟く私に女医は、心配そうに声を掛けた。

「誰か呼ぶ?」

声を掛けられハッとして、停止していた頭が、やっと動き出す。

「いえ、大丈夫です。 ありがとうございました。」

「無理をし過ぎないようにね」

 ぺコリッと、頭を下げ、私は医務室を後にした。

 
 









 



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