離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます

「妻？！　」

　蓮斗さんは、瞳が溢れ落ちるかと思うほど見開いて、固まった。

「…… 妻とは、あれ……か、嫁？　奥さん？　家内？　」

　目をパチクリさせて、何度も聞き返す。

「…… そうですが……　」

（そんなに嫌がらなくても、良くないですか？！　）

　私は思わず、口を尖らせムッとする。

　暫くすると、「なんだこれは、ドッキリか？！　」　と、蓮斗さんはブツブツと、独り言を呟いた。

「離婚届なんですけど…… もう提出…… して頂いたんです、かね？　」

　確認しなくちゃ、と、思いきって訪ねる。


「…… 待ってくれ、頭を整理させてくれ。　その…… 君と俺は結婚…… つまり夫婦、なのか？　」

「…… さっきから何なんですか？　いくら白鳥さんと結婚したいからって、何度も確認しなくても、ちゃんと離婚しますよ。　離婚届だって、蓮斗さんに渡してありますよね？　出してくれたか、確認出来れば、私と貴方はもう他人です」

　ムムッとして、思わず強い口調になる。

「離婚届…… 」

　蓮斗さんは、息を呑むと、バッっと慌てて、部屋を飛び出して、自室に入って行った。

（おお〜っ！　秘密の扉が開いた……！　）

　ガタガタッと部屋を漁る音がして、少しして、離婚届を手に戻って来た。

「…… まだ提出して、なかったんですね」

（ホテルオープンの事もあって二人ともバタバタしてたもんね…… ）

「どうします？　今から二人で時間外受付に行きますか？　それとも、明日私が、提出しに行きましょうか？　」

　自分で言っておきながら、チクリッと痛む胸の感情は、気付かない振りをする。