離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
蓮斗side4
 シエナから離婚届を受け取って、俺はそれを自室にしまった。

 もちろん、離婚する気は、全くなかったからな。

 早々に仕事を終えて、今晩シエナと離婚について話し合うつもりでいた。

 だが、しかし……。

「蓮斗さん! シエナさんからいい話、聞いたかしら? 」

 朝から、母が、満面の笑みを浮かべてやってきた。

「…… シエナに何かしたんですか? 」

「やぁね、そんな怖い顔して。 ちょっとプレゼントを渡しただけよ。 喜んで頂戴、貴方も近いうちに、子育ての楽しみを味わえるわよ」

 母の言葉に、思わずハーーーーッ……っと、溜息を吐く。

「またその話ですか?! 子供の事は夫婦の問題ですから、余計な事はしないで下さいって、言いましたよね」 

「そんな呑気な事言って、いつまで待っても孫を抱かせてくれないじゃない。 子供がいた方が人間的にも、成長できるのよ」

「子供がいなくても、成長は出来ます。 後継者なら、優秀な者を、親戚筋から出すと言う選択肢が、いくらでもあります。 自分の価値観を、押し付けるのはやめて下さい」

 シエナも、母も子供、子供と、何故そんなにこだわるのか?!

 シエナを手に入れる為に、孕んで欲しいとは願ったが、剣菱グループの為に、子供を産んで貰いたくて、彼女と結婚したわけじゃない。 

 シエナだから、シエナの子供だからこそ、愛すると、欲しいと願う、ただそれだけなのに。 

「私は心配してるの。 だからね、あんな子供の産めない嫁はやめて、結菜さんと再婚しなさい。 彼女もそのつもりで、用意しているのよ」

 母は、白鳥との話をグイグイッと、押し付けようと、仕事中にも関わらず、始終俺に付き纏とい、業務の邪魔をする。

 うんざりだ……。

 結局、その日は仕事が思う様に進まず、シエナの元へと帰宅する事が出来ずに、後ろ髪を引かれながら、空港へ向かった。

 ああああ……っ、シエナに行って来ますの、キスをしたかった…… 。

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