離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 飛行機を降りて直ぐに、グランドオープンの準備の為にホテルへ向かう。

 しかし、俺の心は重かった。

「蓮斗さん、グランドオープンのパーティーには、私と出席して、二人の仲をアピールする様に、お義母様から言われましたわ」

 クッ……ッ、ここにも俺の業務を邪魔する、使えない秘書に返り咲いた、白鳥がいた。

 パーティーにはシエナと出席したい。

 いや、する。

 その為には、彼女と話し合わなければならないと言うのに、コイツらのお陰で業務が滞り、時間がない。

 一室ずつ、部屋をチェックして回る俺に、お邪魔虫が付き纏う。

「この部屋には、ブランコを付けたらどうかしら? メルヘンだわ〜。 きっとお客様も喜んで下さるわ。 あ、こっちの部屋はピンクで、お花畑風なんてどうかしら? 」

 あーでもない、こーでもないと、しゃしゃり出て口を出す。

 やめてくれ…… ! 

 これ以上、余計な仕事を増やすな!!

 お花畑は、お前の頭の中だけで十分だ。

「白鳥、部屋は最終チェックだけだ。 今から家具も調度品も、変える気はない」

「もう〜っ、もっと早く私を頼ってくれたら、一緒に…… 」

 ガタガタガターーーーッ!!

 突然、激しい揺れが、周辺一帯に起こった。

「…… !? 」

「キャアアァァッ!! じ、地震よ! いや〜ん、蓮斗さん怖〜いっ!! 」

「……ッバッ! 危なっ、落ち着け! 抱きつくな、白鳥っ!! 」

 ドーーーンッ!!

「うわっ!? 」

 ゴッツ!!!

 バタンッ……ッ

「キャアーーーーッ!? いやーーーっ、れ、蓮斗さん?! 」

「社、社長っ!! 誰か医務室から、先生を呼んでくれ!! あ! 白鳥君、頭を打っているから揺らすんじゃないっ!! 」

「蓮斗さーんっ 私を残して死んじゃいやーっ!! 」

 最悪だ……。

 ズキズキと痛む頭と、薄れゆく意識の中で、今日もシエナの声が聞けないな…… と、寂しく思い、意識を手放した。






< 135 / 205 >

この作品をシェア

pagetop